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特集
目標準拠評価(絶対評価)とは
★目標準拠評価とは、各個人が学習目標に到達したかどうかを評価する方法であり、集団の中での相対的位置を把握する相対評価とは対照的な評価観に立つ。
★指導要録の学習評価においても、平成14年度から、「評定」は、従来の「観点別学習状況」と同様に、目標準拠評価に移行する。
★目標準拠評価の重視の理由としては、
1.学習指導要領に示す基礎・基本の習得状況や子ども一人一人の良い点・進歩の状況の把握に適している
2.児童生徒数の減少により、学年や学級での相対評価では、客観性や信頼性の確保が困難になってきた があげられる。
★分析的評価である観点別評価と総合的評価である評定は、当然関連性がある。単元ごとに、到達規準や到達状況を判定する基準を教師間で議論して統一を図ることが大切である。
目標準拠評価の手順と課題
★目標準拠評価の客観性を高めるためには、まず第一に目標が具体的な形で示される必要がある。それには単元レベルでの目標を観点別に洗い出し、実際の子どもの学習状況が目に浮かぶような短文で評価目標を示しておくことが大切な手順となる。
★次に、それぞれの評価目標を学習場面に対応づけながら、評価の基準を決める手順を踏む必要がある。好ましさ(満足度)から三つの段階度との特徴を示し、それに照らし合わせて一人一人の子どもを評価するのである。
★このような単元ごとの評価が学習評価の原点であり、これをもとにして学期末・学年末の評価が行われるならば、目標準拠評価が誰からも信頼され、わが国の学校に定着するであろう。
目標準拠評価にふさわしい評価方法
★新しい学習指導要領及び指導要録においては、観点別学習状況評価を基本とする考え方をいっそう発展させることが重要である。そこで、各教科の評定においても目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)が重視されるようになった。
★多様な目標の実現状況を評価するには、多様な評価方法、すなわちペーパーテスト、質問紙、論文・レポート、ノート、作品、授業中の「学習活動の様子」の観察、パフォーマンス評価などが必要になる。
★学校の情報公開や説明責任(アカウンタビリティー)への対応から、目標準拠評価を実施する際には、主観性の問題をできる限り回避する方策をとることが大切である。
目標準拠評価による評定
★新指導要録の「-評定」で絶対評価(目標準拠評価)が行われることが決定して以来、評価規準(評価目標)を作成することの必要性が叫ばれている。それは、「-観点別学習状況」での絶対評価(目標準拠評価)を客観化するためにほかならない。
★「-観点別学習状況」での観点別評価を利用して、「-評定」での総合評定を行うための評価規準(判定基準)を設定する方法としては、観点別評価のA、B、Cを3、2、1と得点化し、その単純合計や単純平均を用いるやり方が最も自然であり、最も望ましい方法である。
評価活動のための「ルーブリック」
評価の客観性をどう確保するか「モデレーション」
目標準拠評価の標準学力検査
★標準学力検査は、長期的総括評価に関するものであり、長期の指導によって、実現することが期待される目標の実現状況を確認するためのものである。
★長期の指導によって実現することが期待される目標として、
1.基礎的・基本的な内容の確実な定着
2.自ら学び自ら考える力の育成
3.生きて働く学力の育成 がある。
★「基礎的・基本的な内容」は目標準拠評価が可能だが、「自ら学び自ら考える力」の目標準拠評価は困難である。
目標準拠評価の実際例 評価を改める
★児童生徒一人一人に、基礎・基本をきっちり定着させる指導を行ってきた教師には、目標準拠評価は目新しい評価でもなんでもない。これまでに学習指導要領の改訂を機に、各学校の教育目標の見直しと、その達成に向けての各教科の目標分析を行っていれば、評価規準のモデルが出ないと評価規準表は作れないとは言わないであろう。
★目標準拠評価を行うための手順について共通理解が図れていれば、教師はその作業に結構やりがいを感じるものだ。教育評価は温かい評価であると、勇気をふるって誰かがリーダーシップをとること、そして、教師自らが自分たちの学校という意識を持つことが大切だ。
目標準拠評価の実際例 「学びの想定」による学びの見とり
★子どもの学びのプロセスの中で、教科で育みたい資質・能力が育まれ、学習指導要領に示す目標と内容の実現が行われる。だから、日々展開される子どもの学習状況を見とる物差しが必要である。観点別評価規準を単元ごとはもちろん、活動レベルごとまたは一単位時間の授業ごとに設定することが重要である。
★本校では、子どもの学びの姿を問題解決の過程に沿って想定した「学びの想定」を単元構成表・学習指導案に位置づけ、それをもとに見とっている。
★「学びの想定」には、具体的な観点別評価規準が内包されている。
目標準拠評価の実際例 目標準拠評価の取り組みと今後の課題
★平成13年度に国立教育政策研究所の目標準拠評価の研究指定校となった。その取り組みの概要とこれからの課題について述べたい。
★評価規準・評価基準は、指導内容とかかわっている。基準を意識した指導を行う必要があるが、基準や評価内容をあまり露骨に示しすぎれば、それだけを行う生徒が出てくる心配がある。
★何といっても、授業の目標、単元の目標、教科の目標を生徒によくわかるように示すことが大切だ。また、常日頃の意欲を高める評価が大切なことをあらためて確認したい。
★観点別評価から評定の出し方で、観点別評価を重みづけるのは、事前に生徒や保護者に十分な説明が必要であり、実際には容易ではない。しかし重みづけせずに行った結果、特定の観点が突出して優れた評価であるために評定が不適切と思われる例が出てきた。
★評価方法の多様化も必要である。ここではテストの出題の工夫を紹介する。
連載
新しい観点別評価のポイント(8) 小学校図画工作科 | 文部科学省教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官 板良敷 敏 |
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新しい観点別評価のポイント(8) 中学校美術科 | 文部科学省初等中等教育局視学官 遠藤 友麗 |
新しい教育評価の動向 主要論文の解説(4)「ポール・ブラック」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
パフォーマンス評価の実践的研究(10) 各論文の注目点とこれからの研究課題 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
総合的な学習の実践と評価(7) 評価を学習の設計・展開に生かす | 神奈川県横浜市立大岡小学校教諭 斉藤 一弥 |
だんわしつ | 創価大学教職大学院准教授 大関 健道 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |