月刊誌 指導と評価

2023年 12月号
  1. 2023年 12月号 vol.69-12 No.829  定価:450円
特集
❶新学習指導要領に沿った試験問題のつくり方(中学校)❷SOSを出せる子どもを育てる
  • 入会(年間購読)へ
  • バックナンバー購入へ
  • 【在庫あり】

特集

➊新学習指導要領に沿った試験問題のつくり方(中学校)/新学習指導要領に沿った問題のつくり方

筑波大学附属中学校副校長  新井 直志

★新学習指導要領では、観点が4つから3つになった。よって学習状況の見取り・評価もこの観点に沿って行う。定期テストでも、新しい3つの観点別評価の区分にしたがってどう出題すればよいかという問題がある。まず「知識・技能」と「思考・判断・表現」の違いを理解し、それぞれを評価する問題のあり方の違いを具体例を交えて考える。なお考察にあたっては、筆者の担当分野である理科について述べる。

➊新学習指導要領に沿った試験問題のつくり方(中学校)/「思考・判断・表現」を評価する試験問題の解答方法のバリエーション

埼玉大学・神奈川大学・早稲田大学大学院非常勤講師、元筑波大学附属中学校主幹教諭  肥沼 則明

★「知識・理解」の問題と「思考・判断・表現」の問題を区別する基本方針について提案する。
★「思考・判断・表現」の観点の評価を行うための試験の解答方式は、記述式以外にもいろいろな方法がある。

➊新学習指導要領に沿った試験問題のつくり方(中学校)/中学校国語の試験問題の作り方

上越教育大学附属中学校主幹教諭  岩舩尚貴

★現行学習指導要領では、社会や日常で生きて働く国語力を重視している。「思考・判断・表現」の評価には、パフォーマンステストなどによる評価が不可欠であるが、ペーパーテストでも問題を工夫することで、思考過程を部分的に問うことは可能である。本稿では、鈴木(2021)や石井(2012)を拠り所にして、「読むこと」における「思考・判断・表現」を中心とした問題作成のポイントを述べる。

➊新学習指導要領に沿った試験問題のつくり方(中学校)/中学校社会科で見方・考え方を働かせる問題を作る-地理的分野に焦点を当てて-

兵庫県川西市立明峰中学校教諭  辻 常路

★「思考・判断・表現」を問うためには、見方・考え方を働かせ、深い学びを達成する必要がある。地理的分野を例に、見方・考え方を働かせる問題例を紹介する。

➊新学習指導要領に沿った試験問題のつくり方(中学校)/中学校数学の試験問題のつくり方

お茶の水女子大学附属中学校教諭  藤原大樹

★資質・能力は3つの柱をバランスよく育成し評価する。「知識・技能」の問題では、概念的な理解についても出題する。未知の状況にも対応できる「思考・判断・表現」の問題は、安易に難易度を上げるのではなく、測る力の対象を見定め、記述式で出すのが最適であるが、短答式も考えられる。学習と評価を一貫させて評価の妥当性を高め、採点について複数の教員ですり合わせておいて評価の信頼性を高めたい。

➊新学習指導要領に沿った試験問題のつくり方(中学校)/中学校理科の観点別総括評価問題をつくる

広島大学附属中・高等学校教諭  杉田泰一

★定期テストでは、各観点の意味を踏まえ、科学的に探究するために必要な資質・能力を「知識・技能」「思考・判断・表現」の観点から評価する問題を作成する。「知識・技能」は、構造的な知識(概念)を問う。「思考・判断・表現」は、観察実験を行う前後の場面等を取り上げ、生徒の授業中のつまずき等を基に問題を作成する。こうして、生徒の学習や教師の指導にフィードバック可能な観点別の総括的評価につなげる。

➊新学習指導要領に沿った試験問題のつくり方(中学校)/中学校英語の試験問題の作り方

富山大学附属中学校主幹教諭  吉崎理香

★令和3年度から中学校で新教育課程が始まり、学習評価に関してはその変革の大きさゆえにとまどう教員が多い。本稿では「聞くこと」「読むこと」「書くこと」におけるペーパーテストの作問のポイントについて述べる。特に「思考・判断・表現」の作問を中心に説明しながら「知識・技能」との違いにふれている。また、多肢選択式の「思考・判断・表現」の妥当性・信頼性の高い作問に言及している。

➋SOSを出せる子どもを育てる/これからの自殺予防教育の方向性と課題-『生徒指導提要』の改訂を踏まえて-

関西外国語大学教授  新井 肇

★若い世代の自殺が急増し、2022年には500人を超える児童生徒が自ら命を絶つという深刻な状況がみられた。児童生徒の自殺を防止するために、学校において「SOSの出し方に関する教育」が実施されつつあるが、SOSを受けとめる側の教職員や保護者など周囲の大人に対するゲートキーパー教育を並行して進めることが求められる。

➋SOSを出せる子どもを育てる/子どもの援助要請の理解と、SOSを伝えやすい学校のあり方

大阪教育大学教授  水野治久

★子どもが適切にSOSを出す、つまり援助要請することはむずかしい。問題行動という形で援助要請する場合もあるし、過剰に援助要請することもある。また、子どもは困っていることで助けを求めるとは限らない。子どもが援助要請したテーマの背後に解決すべき課題があることがある。
★子どもの支援をチームで行うためには、教師自身も周囲にSOSを伝えて助けを求められることがポイントである。

➋SOSを出せる子どもを育てる/助けてと言えない子どもの背景と理解-相談の利益とコスト-

立正大学教授  永井 智

★利益とコストとは、「助けて」と言ったり言わなかったりすることで、どれくらい「よい結果(利益)」と「悪い結果(コスト)」が生じるかという期待のことです。
★「助けて」が言えない子どもの多くは、「助けを求めることは役に立つ」という一見あたりまえの認識をもっていません。教師は、日ごろから、「この先生はいざというときにちゃんと助けてくれる人だ」と思ってもらえるようなかかわりを心がけることが重要です。

➋SOSを出せる子どもを育てる/学校におけるSOSの出し方教育

北海道教育大学函館校准教授  本田真大 

★SOSの出し方、つまり相談することは心理学の「援助要請」の概念で長年研究されています。本稿では心理学の研究成果を踏まえて相談できない子どもの心理を理解する視点を提供し、具体的な相談の促し方、SOSの出し方を教育する方法を紹介します。さらに、SOSの出し方教育の次にめざしたい「援助要請に優しい学校(help-seeking friendly school)」という考え方を解説します。

❷SOSを出せる子どもを育てる/高等学校でのSOSの出し方教育プログラムの実践

北海道七飯高等学校教諭  加藤孝志・北海道教育大学函館校准教授  本田真大 

★本校では総合的な探究の時間において、第1学年の夏休み前までにSOSの出し方教育プログラムを実施しています。8年間継続する中で少しずつプログラムを修正し、現在は50分授業5回分のプログラムが行われています。プログラムは心理学の援助要請研究の成果を踏まえて作成され、ソーシャルスキルトレーニングで構成されています。本稿では大学と共同した実践を紹介します。

連載

巻頭言/SOSを言える環境づくりとSOSの受信力 東京成徳大学教授・筑波大学名誉教授
石隈 利紀
算数科で育てる「思考・判断・表現」する力⑻単位量当たりの大きさ-混み具合の比べ方を考える- 明星小学校副校長・前筑波大学附属小学校副校長
夏坂 哲志
目標準拠評価を教育に生かす(19)社会科の評価⑴目標準拠評価に必要な通年の評価基準と詳しい評価事例集 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
漢字を教える・学ぶ⑷漢字の「読み」における親密性の効果 東海大学准教授
関口洋美
法政大学名誉教授
吉村 浩一
「叱る」を考える⑼アドラー心理学からみた「叱り」 明治大学兼任講師
浅井 健史
子どもを真ん中に置いた支援⑶福祉領域の支援者とつながる~児童相談所や市町村との連携を中心に~ 立命館大学大学院特任教授
野田正人
「あきらめる」を肯定的にとらえる⑼キャリアガイダンスとあきらめる 十文字学園女子大学准教授
永作 稔
TOP