月刊誌 指導と評価

2019年 12月号
  1. 2019年 12月号 Vol.65-12  No.780  定価:450円
特集
チーム学校:教育相談コーディネーターを中心に
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特集

海外における児童生徒への支援の専門性の検討

福岡教育大学教授  西山久子

★日本での教育相談コーディネーターのあり方への示唆を得るため、諸外国の状況を分析し、専門性の検討を試みた。
対象は、米国・英国・香港・台湾・韓国・シンガポールの6か国・地域である。その結果、①中核人材の役割と連動した免許・資格・職位等の設定、②実情にそった多職種の活用が行われていることが示された。また、日本のSC・SSWは、教員(教育の専門家)の中に、心理や福祉の専門職が付加される、いわば「専門職付加型」である。海外では教員から研修や資格取得等で適任者を教師SCなどに任命する「教員分化型」も見られた。実践では、管理職も含めた研修や、役割の階層化など、それらが適切に機能するための工夫が行われていた。

教育相談コーディネーターの役割と養成

高知県立高知北高等学校主幹教諭  今西一仁

★現在、都道府県の教育センター等で行われている教育相談コーディネーターの養成研修を概観すると、①研修講座型、②長期派遣型、③アウトリーチ型の3つに分類できる。筆者は、③の研修の企画・運営を担当した経験から、教育相談コーディネーターの主な役割はアセスメントから支援につながるサイクルづくりを通して支援のシステムづくりを進めていくことにあると考えた。今後、こうした役割の明確化・具体化を踏まえてその養成を進めていくためには、研修の内容を受講者の在籍校における職務や権限とつなげていく方策と、従来の校務分掌との調整や相談教諭・支援教諭等の設置についての行政レベルでの資格要件の検討が必要になると思われる。

全校一斉で実践するSGE

福島県白河市立白河第三小学校教諭  佐々木雄一郎

★白河第三小学校では、SGEを全校一斉で実施している。年間を通した実施計画に基づいて三回の実技研修会を設定し、PDCAサイクルを機能させている。全校一斉でSGEに取り組むうえでは、学級集団に差があることが大きな課題であったが、簡易的な事前研修を行い、実施方法等について確認するとともに、子どもの実態やアイディアを共有し、ねらいの設定や実施方法を工夫することで、学級集団の発達の差に応じて取り組むことができるようにしている。
★このような取組を継続してきたところ、QUの結果では学級生活満足群の児童が増え、学級生活不満足群や要支援群の児童が減少している。また、欠席者数の減少にも効果が見られた。

厚みのある「チーム学校」を組織する:小学校での実践

小金井市立小金井第四小学校副校長  山岸史子

★「チーム学校」とは、いままでも当たり前に行われてきた組織対応の形である。それをなぜいま、あえて「チーム学校」と名づけ、学校経営の重要な要素としているのか。それは、学校の中に持ち込まれる社会のさまざまな課題が多様化・複雑化し、これまで以上に、チームとして向き合い、解決の方策を練っていかねばならなくなっているからだと考える。教員が児童に向き合い、SCが学校教育の心理的側面から児童・保護者・教員を支え、SSWが家庭に寄り添い、地域の関係機関や福祉と結びつけ、特別支援コーディネーターが発達の課題を支援する体制を調整している中で、副校長は全体のコーディネーターとして、どのように役割を果たしてきているのか振り返ってみたい。

経験や勘だけに頼らない支援のためのシステムづくり:中学校での実践

豊島区立千登世橋中学校教諭  笠 さわ子

★中学校ではとくに教師特有のイラショナル・ビリーフにより、教師と生徒のミスマッチがおきやすいと考えている。
★教育相談で学んだ心理学の理論が教師の支援や教師全員の基本姿勢となるように、「教育相談だより」や「スタンダード」を通して伝えている。
★教育相談になじみのない教師にも、対応や考え方・理論的な背景を伝え、経験や勘だけに頼らない教育実践をする教師を増やしたい。
★教育相談コーディネーターが異動していなくなっても実践が継続できるよう、学校組織に位置づけ定着できるシステムをつくることを目指している。

相談室担当教員の業務と役割:高等学校での実践

東京都立新宿山吹高等学校相談室担当教員  髙田幸治

★本校の定時制課程には専任の相談室担当教員が配置されており、教育相談コーディネーターに近い役割を果たしている。教育相談業務のほか、生徒向け心理教育の実践、校内研修や保護者講演会の企画・運営、外部機関との連携などさまざまな業務を担っている。本稿ではこうした相談室担当教員の業務を紹介するとともに、チーム学校のなかで果たす役割について述べる。

教育相談コーディネーターとしての実践:養護教諭の立場から

山形県村山市立楯岡中学校養護教諭  土屋隆子

★社会全体が大きく変化する中、児童生徒や保護者がかかえる課題は多様化・複雑化している。私たち養護教諭は常にその近くで、変化を敏感にとらえながらそれらのニーズに応え、児童生徒の健やかな成長を支援してきた。平成20年の中央教育審議会答申では、養護教諭が学校保健活動推進の中核的役割を果たし、コーディネーターとなり心の健康問題解決に対応することと提言された。
★さらに、平成27年「チームとしての学校」の提言の中では、さまざまな他職種と連携・協働してきた養護教諭の経験を活かすことが明確に示され大きな期待が寄せられている。ここでは養護教諭としての専門性を活かし、予防・開発的な体制づくりや健康教育、初期対応、そして継続支援が必要な際のチーム支援において、実践してきたことを提案していきたい。

教育相談コーディネーターモデルの検討

早稲田大学大学院教授  髙橋あつ子

★教師として成長していくプロセスには、新人期から経験を通じて熟達していくモデルがある。さらに教育相談コーディネーターという専門性を磨きながら成長するプロセスは、一教師として支援を実践し、チーム支援に寄与し、そのチームを牽引し、加えて組織やシステムを改変していく実践の道筋として描ける。管理職にはそれらをマネジメントする力が求められ、教育委員会は各層に側面から研修など強化していく役目を担う。このほか、PBISでは全教師が3段階支援の企画、運営を行いつつ、同時に一次~三次支援の実践に取り組み力をつけていく。教育相談コーディネーターはチームや取り組み全体をファシリテートして成長していく。これも新たなモデルである。

巻頭言/「未然防止のスクールカウンセリング」を推進するチーム学校と教育相談コーディネーター

日本スクールカウンセリング推進協議会理事  加勇田修士

連載

「教師力」アップセミナー 子どもとともに成長する教師をめざして(9)学校全体で取り組む研究的実践の進め方②-人権教育のクロス・カリキュラムと構成的グループ・エンカウンター(SGE)の共通実践、生徒の意識や行動の変容をとらえるための試み- 創価大学教職大学院准教授
大関 健道
QUを活用したPDCAサイクルで教育実践の向上をめざして(9)二つの大きな学校教育の課題に正面から取り組む学校から学ぶ 早稲田大学教授
河村 茂雄
続・説明文・意見文を書くことの指導(9)ロジカル・ライティングによる意見文を書く学習(1)中学校 名古屋大学教育学部附属中・高等学校教諭
瀬古淳祐
「主体的・対話的で深い学び」を創る(7)全教育活動において、論理的な「言語活動」の可視化を貫徹し、論理的思考力を鍛え上げる「ロジカル・アクティベーション(LA)」の提言とその実践 神奈川県川崎市立宮崎中学校教諭
町田 憲二
教育統計・測定入門(81)欠損値を処理する削除法と単一代入法 法政大学教授
服部 環
教育相談はこう学ぶ!-全国各地の特色ある教育相談研修-(9)「いじめ防止対策支援プログラム」を基本にした教育相談研修 山形県教育センター教育相談課
山形県教育センター教育相談課
通常学級の実践から学ぶ特別支援のヒント52(9)課題のプロセスに関する配慮 埼玉県立大学准教授
森 正樹
こうすればうまくいく!スペシフィックSGE(10)手料理としてのSGEをつくる-子どもや集団に応じた調理の工夫 富山県総合教育センター教育相談部
永田悟
授業をみる・語る・研究する(8)言語スキルの分析③-協同学習における対話 静岡大学准教授
町  岳
公認心理師の資格をもつガイダンスカウンセラーの実践(9)保育者・教員養成大学における不適応予防のための支援 都留文科大学准教授
武蔵由佳
講座キャリア心理学-キャリア発達を支援する(9)制限・妥協理論 労働政策研究・研修機構副統括研究員
下村英雄
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