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特集
「生徒指導提要」にみるこれからの生徒指導
★平成二二年四月に文部科学省より、小学校から高等学校段階までの生徒指導の理論・考え方・指導方法に関する基本書として、『生徒指導提要』が公開された。本書は、生徒指導に関する必読書である。
★昭和四〇年刊行の『生徒指導の手びき』、昭和五六年刊行の『生徒指導の手引(改訂版)』を踏まえた上で、従来の手引にはなかった生徒指導上の個別の課題への対応の要点、発達障害を含めた発達的な視点に立った対応の必要性、生徒指導に関する法規等の理解の必要性など内容的に刷新されている。
★今後の生徒指導では、学習指導・特別支援教育・キャリア教育との相互連関性に配慮して、計画的・継続的・組織的に実践することが大切である。
生徒指導とキャリア教育における「構え」の必要性
★今日の厳しい社会情勢の中、学校教育において、活力に満ちあふれた児童生徒を育成する、毅然とした生徒指導に基づくキャリア教育の推進が求められている。
★生徒指導とキャリア教育、とこに最終的に求めることは、社会的・職業的自立をするための資質・態度を育成し、生きる力を獲得することにある。そのための土台として必要とされるもの。それが、「構え教育」といえよう。何かを得たい場合、何かに立ち向かう場合、必ず「構え」が必要とされる。まずはじめに、「学ぶ構え」「働く構え」「生きる構え」それぞれの「構え」が児童生徒の心と身体に合ってこそ、活きた生徒指導、意味のあるキャリア教育が展開できるといえよう。
「切り捨てない毅然とした生徒指導」とは
★「切り捨てない」指導のためには、①私たち教師は自らの教科指導を見直し、生徒が理解し、楽しいと感ずる授業づくりに向けて研鑽を重ねること、②学級活動や学校行事など、生徒が集団として自主的かつ充実感を持って取り組める場面を設定して指導を工夫することに努めること。
★「毅然とした生徒指導」とは、指導の軸がぶれずに対応することである。「だめなものはだめ」と言える学校、学級の風土の情勢が大切である。
★小学校と中学校の連携にあたっては、「学級経営の充実」の視点が大切である。学級会活動を活用して、子どもたちが自ら話し合い活動を通して、生活のルールや仲間への思いやりを育む場面を積極的に設ける指導を、校種をこえて実践することが大切である。
特別支援教育と生徒指導
★発達障害児の生徒指導を考える。生徒指導は児童生徒の人格のより良き発達と、学校生活の充実を目指す。前者は「生きる力」の成分能力を育てることによって、後者は思いやりの学校文化の創造によるいじめや暴力の抑制によって保障される。
★発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害で、症状が通常低年齢で発現するものをいう。
★その指導では、かんしゃくと自傷・自己刺激などの行動のメカニズムを理解し指導する必要がある。
★生徒指導では、思いやりの学校文化の創造と、望ましい行動をすべての子どもに意図的に教えるガイダンス・カリキュラムの開発と実践が急務である。
ガイダンス・カリキュラム-社会性を育てるスキル教育-
要約(20字×15行=300字)
★不登校やいじめなど学校不適応の問題は、今や社会全体の問題である。また、視点を変えてこれらの問題を捉えると、人間関係の改善や社会性の育成の課題と関わってくる。学校もこの問題をいかにとらえ、いかに対応するかが生徒指導上の大きな課題である。
★各学校の実態に基づいて、社会性の向上に結びつくスキルを体験的に身に付けさせる授業を、教育課程に位置づけて教育実践を進めることが大切である。このことを推進することにより、授業不成立、教師の指導に対する反発、問題行動の頻発などの状況に、事後的に対応するのではなく、予防的・開発的な対策を講じることにつながる。
中学校における生徒指導の実際
★学校における生徒指導の目的は、問題行動の事後指導にとどまっていてはいけない。予防・開発的な生徒指導になるためには、「指導体制」「基本方針」のほかに「児童・生徒理解」「開発的な指導計画」「個別の問題行動への対応」「家庭・地域との連携計画」が必要になる。一分掌を越えた学校教育全般にわたる内容になるので、他の分掌や学年団との分担協力の体制を明確にしておくことが重要になる。
★また、年度当初に立てる指導計画は、実態を踏まえたものである必要がある。そのためには、QーUを初めとする諸調査の実施は重要である。さらに、アセスメントから始まった指導は、必ず途中で評価し、改善をすることが大切である。
中学校における生徒指導の実際
★生徒指導を充実させるためには、生徒指導のもつ四つの機能を理解する必要がある。
★積極的生徒指導を系統的・組織的に展開し、児童生徒の社会的資質や自己指導能力をはぐくむことが大切である。
★問題行動等の未然防止のためには、教師の児童生徒理解力等を高めるとともに、家庭や関係機関との連携が大切である。
★問題が生じたときは、学校としての方針を明確にし、各教師の持ち味を生かした指導を行うが、指導内容は「同一化」が求められる。
★困難な問題の対応では、専門機関との効果的な連携が必要となる。
連載
教えて考えさせる授業(5)「教えて考えさせる授業」を展望する | 東京大学名誉教授・帝京大学中学校高等学校校長 市川 伸一 |
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坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(54) 小学校五年、異分母どうしの加減法、番数×整数、分数÷整数 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
これからの国語科教育(9)小学校「話すこと・聞くこと」 | 横浜市立東小学校長 松永立志 |
これからの理科教育をどうするか(15)中学校三年「化学変化とイオン」 | 筑波大学附属高等学校講師・元筑波大学附属中学校教諭 荘司 隆一 |
第4回全国学力調査結果の考察(2)中学校数学 | 栃木市立藤岡第一中学校教頭 中島聖巳 |
これからの学習評価(8)評価規準の参考資料をカリキュラム校正論から考える | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
教育・心理検査入門(9)進路適性検査と職業適性検査 | 法政大学教授 服部 環 |
小学校英語活動のポイント(21)PDCAサイクルによる「外国語活動」の運営の在り方と方法-その1(教育課程編成の基本) | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
だんわしつ/朗読で育もう、読解力と表現力 | 山形大学教授 三浦登志一 |
ひとりごと/転校 | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |