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特集
規範意識の育成と生徒指導
★社会環境が急速に変化するなか、生涯にわたって自己形成と人格の発達を進めていくためには、児童生徒一人一人が自己指導力・自己統制力をしっかりと身に付けることが求められている。
★自己指導力・自己統制力の基底をなす規範意識を育成するためには、生徒指導の対応に関する方針や基準を明確にし、児童生徒、保護者等に周知し、毅然とした粘り強い指導をしていくことが必要である。
★児童生徒の規範意識の醸成については、学校教育だけでなく、子どもたちの健全育成の観点から、家庭・地域と連携して推進することが大切である。
総合的個別発達援助としての生徒指導 アセスメント(生徒理解)に基づく生徒指導体制づくり
★生徒指導は、子どもが引き起こす深刻な少年犯罪や問題行動の多発によって危機的状況です。この危機的状況を打開するためには、教師間や教師と保護者間の生徒指導に関する共通理解が必要です。
★生徒指導とは、子ども一人一人のよさや違いを大切にしながら、彼らの発達に伴う学習面、心理・社会面、進路面、健康面などの悩みの解決と夢や希望の実現をめざす総合的な個別発達援助です。
★生徒指導では、介入的・治療的な(リアクティブ=即応型)生徒指導と、開発的・予防的な(プロアクティブ=先手型)生徒指導があります。
★今後の生徒指導では、多面的なアセスメント(生徒理解)によって得られた生徒指導データに裏打ちされた計画的・組織的な生徒指導が求められます。
アメリカのゼロトレランスと開発的な生徒指導
★ゼロトレランスは、当初、学校における武器・薬物所持や暴力に対する停学と退学の一貫した強制的な適用を意味した。それはコロンバイン高校などでの銃撃事件に対する対応として採用された。
★ゼロトレランス政策には欠陥がある。1.必罰政策のみで信勝政策を含んでいない。
2.軽微な問題行動にも厳罰を適用して恐怖社会を生み出す。
★とくに黒人生徒や障害児に対する不均衡な罰の適用という弊害を生み出す。
★積極的な生徒指導は、行動の抑制よりも望ましい行動の促進を強調する。望ましい行動が賞賛される希望のもてる社会でこそ、周囲を喜ばせよう、悲しませる行動は慎もうという社会的動機づけが育つ。
発達段階と生徒指導
★児童期の生徒指導では、劣等感をもたせないようにし、子どもたちが自信を維持できるように指導していくことが必要である。
★思春期の生徒指導では、生徒を子ども扱いせず、生徒の個性やプライドを尊重した対応が必要である。大人どうしで語り合うような指導の仕方ができるとよい。
★開発的な生徒指導の基本姿勢は、まず一人一人の生徒と話をする時間をつくること。そして、生徒の語りに教師が耳を傾け、教師が自分の目で相手を理解しようとすること。生徒を知り、理解しないことには、信頼関係は築けないからである。
生徒指導に役立つ技法
★生徒指導には、さまざまなカウンセリングの技法が役に立つ。子どもの問題行動にアプローチする「治療的な生徒指導」には、一般的にいうカウンセリングの技法が役に立ち、クラスや学校全体にアプローチする「予防・開発的な生徒指導」には、あるテーマの理解をめざしてプログラム化された応用的なカウンセリングの技法が役に立つ。
★教師が、子どもとその集団の必要性に応じて技法を選択し、全体の指導の中に位置づけていくことが大切である。
生徒指導に役立つ児童生徒理解の検査 POEMとQ-U
★児童生徒理解の方法には、観察法、面接法、検査法などさまざまな方法がある。いくつかの方法を組み合わせ、多面的に理解していくのが理想となろう。本稿では、検査法の例をいくつか紹介する。
★POEMは、児童生徒理解カードであり、児童生徒の個性を理解し、適応状況を診断し、行動傾向を予想する検査である。小学生用から高校生用まで作成されている。
★Q-Uは、楽しい学校生活を送るためのアンケートで、心理検査として標準化されたものである。児童生徒の学級における満足度や、学校生活での意欲、さらに学級集団の状態をとらえることができる。
子どもの荒れとどう向き合うか
★生徒指導は、学校教育における全教育課程に機能し、その基盤となるものである。したがって、年間指導計画を作成し、生徒指導体制を確立して、児童生徒の自己指導能力の育成をめざす指導が推進されなければならない。
★そのためには、学校の教育目標を全教職員が共通理解し、児童生徒の実態や地域の願いなどを十分に踏まえ、意図的・計画的・組織的に指導が行われることが重要である。
★生徒指導部は、問題行動対応に向けて、組織的な対応(危機対応マニュアル)ができるよう、各自の果たす役割を熟知しておくこと。また、未然防止・開発的生徒指導の視点に立ち、児童生徒の自己成長を援助する教育活動を率先し、共通実践を促していくこと。
教科指導のなかの生徒指導 学びの場が、快さと心ときめく時間となるように
★今日の子どもたちは、大人や教師を驚かせるような鋭さや可能性をもつ一方、他者とのつながりを欠き傷つくことを恐れ、もろく壊れやすい側面ももっている。
★教科指導(授業)の中で、子どもたちの閉ざされた関係を、つながりやふくらみのある新たな関係へと切り開いていく必要がある。
★そのためには、学びの場に安心と自由が保障されなければならない。聴き取られる快さから自他への信頼を深めていく。そして、教科の真理や真実を子どもらしい問いや学びとつなげ、解き明かしてゆく-その課程を大切にすることだ。同時に、表現や体育のゲームなどの学習において、認め合い学び合い協力し合う関係を築くことも忘れてはならない。
連載
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