月刊誌 指導と評価

2005年 12月号
  1. 2005年 12月号 Vol.51-12 No.612  定価:450円
特集
ガイダンス再考
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特集

ガイダンスとは何か-なぜ、いまガイダンスか

文部科学省初等中等教育局視学官  森嶋 昭伸

★ガイダンスは、生徒が環境や社会の変化によりよく適応し、その個性や能力を最大限発揮できるように導く教育活動であり、社会的自己実現への主体的な取組を促す指導・援助である。

★ガイダンスの機能の充実とは、これまでのガイダンスの在り方を改めて見直し、そこでの取組が、児童生徒の【生きる力】の育成に結びつく教育活動や教育指導として十分に機能しているかを見直すことである。

★ガイダンスの機能の充実を図るためには、生徒の実態を踏まえ、その課題解決に向けて教職員はもとより保護者・地域の教育力や生徒の力も生かすなど、学校の総合力を発揮することが大切である。

ガイダンスとその周辺

教育臨床研究機構理事長  中野 良顯

★ガイダンスは、機能としての生徒指導と領域としての特別活動を充実させる目的で、いまの学習指導要領に含められた。

★生徒指導と特別活動の充実の成否は、ガイダンスの授業(ガイダンス・カリキュラム)を組織的に提供できるか否かにかかっている。

★われわれが開発したガイダンスの授業サンプル「迷ったときの決め方のいろいろ」は、「導入」「目標の提示」「活動--自分はどうかな?」「活動--いろいろな決め方」「まとめ」「ふり返り用紙の記入」「その日の反省会」からなる組織的プログラムである。

★このようなプログラムを開発・集積・普及できるようにするには、現在のスクールカウンセラーに代わって、ガイダンスの専任者を配置する必要がある。

★また道徳、特別活動、総合的な学習の時間を有機的に統合した「人間料」を新設し、人間形成の授業を組織的に提供できるように改革することが望ましい。

キャリア教育による社会性の育成

筑波大学教授  渡辺 三枝子

★「キャリア教育」は一般的に肯定的に受けとめられているが、その本来の意味を十分に理解したうえでの受けとめられ方とはいいきれないのが現状である。そこで、社会性の育成に言及するに先立って、平成十六年一月文部科学省の報告書に基づいて、「キャリア教育」の意味を紹介する。キャリア教育とは、学校と社会、学ぶことと働くことを統合することで「生きていく力を発達させる」という視点に立った、教育改革の理念と方向性を指すものであり、特定の教育活動を意味するものではない。

★つづいて、社会性の発達を四つの能力領域を提案することによって具体的に解説する。最後に、キャリア教育における社会性の育成に不可欠な条件として教師の資質の向上を説明する。

ガイダンス定着のために必要なこと

東京福祉大学教授  今泉 紀嘉

★ガイダンス機能の定着のために、まずは、教職員にガイダンスの重要性やその機能、必要性などを認識してもらうことから始まる。それには、校内研修などで全職員参加しての理論研修と、それに基づいてのガイダンスの機能を生かした年間指導計画の作成である。

★次に、実践的な研修である。学級担任は、あたたかでダイナミックな集団活動を営む学級経営能力はもちろん、教育相談研修の一環として、サイコドラマ(心理劇〉、ソーシャルスキルトレーニング、構成的グループエンカウンターなどの人間関係形成能力や対立解消スキルを獲得するトレーニング、およびキャリア教育の一環としてのワイド相談、インターンシップへの参加などを生徒とともに経験し、ともに成長する姿勢が大切である。

小学校におけるキャリア教育の実践

埼玉県春日部市立武里小学校教諭  鈴木 教夫

★小学校におけるキャリア教育は、子どもたちが自己を理解して自分の能力を十分に発揮し、将来社会的にも有用な存在になりうるように援助することである。

★小学校におけるキャリア教育は、夢と希望を育てることが原点である。そのためには、「将来どんな人になりたいのか」「尊敬する人はだれか」「どんな仕事をする人になりたいのか」などを繰り返し子どもたちに質問し、子どもたちが将来の夢について真剣に考えたり、話し合ったり、発表し合ったりすることが必要である。夢は心身の成長とともに変わることもあるが、夢をもちつづけることが大切である。

中学校でサイコエデュケーションを取り入れた総合的な学習

愛知県犬山市立城東中学校教諭  岩田 和敬

★ガイダンスとは「児童・生徒一人ひとりの成長、発達を促す教育活動」であり、「生活上直面する様々な問題を自分で解決できるように援助し、以って自己指導力の育成を図ること」であると考えている。つまり、児童生徒が自発的・自律的に自分の行動を決断し、実行する力を育成することである。

★具体的には「情報提供すること」「案内すること」「説明すること」「助言すること」「教えること」である。ガイダンスが学校教育で扱う領域は、以下の六つにまとめることができる。-学業指導、-進路指導、-個人的適応指導、-社会性指導、-余暇指導、-健康・安全指導。

★これらの領域の諸問題に対応するための実践方法として、サイコエデュケーションを試みた。以下はその実践報告である。

高等学校における実践「キャリアガイダンス」

彩の国学舎くき学園  吉田 隆江

★「ガイダンスセンター」は「高校生活のアドバイザー」である。「じぶん・長所発見」「ともだち・発見」「しんろ・キャリア発見」をキャッチフレーズに、生徒のだれもが遭遇する問題に対処できるような援助を模索している。

★「キャリアガイダンス」は「生き方指導」であると考えている。だから、一年次から、少しずつ少しずつ積み上げるような指導・援助が必要になっているのである。全体指導による「ガイダンス」は、その概要を示し、情報を提供する。同時に、個別の相談によって、個々の問題に応じることができるシステムもなくてはならない。「キャリア・カウンセリング」が必要である。

連載

授業をつくる(5)中学校社会科   地理的分野「世界の地域構成」の学習指導 筑波大学附属中学校教諭
山口 泰宏
新しい評価の仕組み(1)   目標準拠評価の現状と到達目標の明確化 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
諸外国の初等中等教育改革の動向(8)オーストラリア   達成目標の設定とその評価 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
私の教育評価実践(6)目標分析の考え方に基づく評価方法の試行   指導と評価の一体化の授業構想と実践 前愛知県知立市立来迎寺小学校教務主任
島原 洋
特別寄稿「補充的な学習と発展的な学習の日常化をめざして」 栃木県小山市教育委員会指導主事
橋本 美智明
だんわしつ 山形市立第三小学校教諭
佐藤 幸司
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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