月刊誌 指導と評価

2004年 12月号
  1. 2004年 12月号 Vol.50-12 No.600  定価:450円
特集
思考力、表現力、意欲の評価
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特集

思考力の様相と評価

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

★思考力を五つの様相から考えることは、指導の上で参考となる。

★思考力の評価方法として従来型のペーパーテストのほか、パフォーマンス評価が必要である。

★思考力の発達を評価するには、スタンダード準拠評価の枠組みが必要である。

「学習感想」による数学的な考え方の評価

山梨大学教授  中村 享

★評価には、指導法の改善や教材の適切性を明らかにする役割と同時に、子どもが自らの学習をふり返るという自己評価としての役割もある。

★思考力の評価では、子ども自身が自らの思考過程をふり返るという自己評価が大切である。そこで、「学習感想」という書く活動を授業に取り入れ、感想の中から数学的な考え方にかかわる記述を取り出し、思考力の評価に役立てる。

社会科における思考力の評価

佐賀大学教授  佐長 健司

★社会科には、「事実に関する思考」に限定する場合と「価値的な思考」まで行わせる場合がある。

★「事実に関する思考」では、第1に資料に基づき事実的な知識を得る。第2に、得られた事実的な知識を関係づけて概念的な知識に到達する。前者において「事実的な思考」を、後者において「概念的な思考」を指導、評価する。

★「価値的な思考」は、事実を根拠として規範的な結論を得る思考である。その正当化のために価値的な言明、さらには一般的な価値を明らかにする。この過程において、価値を基準とする価値的な思考を指導、評価する。

★これらのような思考の構造、指導と評価の論理に即して、総括評価としてのペーパーテストも行われるべきである。

理科における思考力の評価   「科学的な思考・判断」「観察・実験の技能・表現」を中心に

岡山県高梁市立落合小学校教諭  川上 はる江

★問題解決の能力を育成するためには、四観点で漠然と評価するのではなく、単元の特性に応じて、問題解決の能力に焦点を当てた指導過程や指導方法、評価を工夫することが必要である。

★「科学的な思考」を評価する方法として、評価規準の具体を作成していると便利である。その具体(評価基準)は、能力を発揮している児童が見せるであろう行動、つぶやきなど、児童の姿で記述しておくと、授業の中で簡単に評価でき、適切に支援できる。

★「科学的な思考」を質の高いものに深めていくためには、「追究への関心・意欲・態度」が支えるものとして重要である。

表現力の評価

東京学芸大学教授  岸 学

★表現力はさまざまな情報を広く発信するために必要な学力である。学校教育での表現は、「事実の情報表現」と「意図の情報表現」とに区分できる。

★事実の情報表現力はプレゼンテーション能力として注目されている。その指導と評価では、わかりやすい情報伝達力の育成が焦点となる。また指導場面で、情報の受け手の知識状態や意欲に応じた多様な伝達練習が重要である。

★意図の情報表現力を評価するには、指導者が児童・生徒の意図を把握し、それをサポートする技術を指導して評価していく必要がある。オンデマンド型の評価方法が参考になる。

国語科における表現力の評価

山梨大学教授  岩永 正史

★私たちは、感じ、考えたことを言葉によって表現するが、その感じ、考えること自体を言葉によって行っている。国語科において表現力の評価を考える場合、前提として、そこで用いられている言葉が、子どもの思考を促すものになっているかどうかが重要だ。

★そういう観点から子どもの表現を見る場合、重要な着眼点はまず、段落の有無や機能語(助詞、接続詞など)の使用である。これらは、表現者の思考のまとまりや、まとまりごとの関係把握のあり方を示すからだ。加えて、音声による表現の場合には、聞き手に話題や語の組み立てを知らせる表現も重要になる。

★このようにすると、学習指導要領にある文言を、実際にどんな表現に着目して評価すればよいかが明らかになる。

図画工作科における表現力の評価

大阪府守口市立春日小学校教諭  福岡 知子

★図画工作科では、「造形への関心・意欲・態度」「発想は構想の能力」「創造的な技能」「鑑賞の能力」の四つの観点を、育成する資質や能力として捉えている。これらを互いに関連させながら豊かな表現力を伸ばしていきたい。

★確かな学力の実現状況をとらえる評価は、目標に準拠した評価の考え方をもとに、観点別の評価規準をもうけ、評価方法や評価情報の収集を工夫することだ。今後は、子ども自身による評価情報の振り返りを工夫したい。

★事例として、高学年の「造形遊び」A表現(1)を取り上げ、観点別評価の読み取りとその総括を示す。

意欲の評価

上越教育大学准教授  中山 勘次郎

★学習意欲は、どのような状態の子どもたちを対象とするかで大きく変わってくる多義的な概念である。このため、できるだけ幅広くカバーできるようなとらえ方が必要である。

★その上で、意欲の方向性を区別して考えることは、子どもたちの多様な学習意欲をよりよく理解するために有益である。それによって個々のケースに応じた教師の「次の一手」が計画できるようになる。

★学習意欲の評価には、行動指標によるものと質問紙法があり、両者を併用することでより包括的な評価が可能になる。質問紙法に関しては、単純な「面白かったか」ではなく、的確に意欲を評価するための質問項目の工夫を提案する。

英語科における意欲の評価

東京都練馬区立豊玉中学校教諭  津田 雅子

★「意欲」とは何か。情意的な心の動きを評価できるのか・・・・。英語学習における「意欲」の意味合いを明確にしておくことが必要である。

★「意欲を評価する」ことを意識的に評価の観点に入れるようになって3年目を迎えている。教師の計画的な評価の視点がなければ意欲を評価することは難しい。評価するための内容、方法を工夫することが大切である。

★生徒は、継続的、発展的な指導、評価を通して、英語力を高め、その中で意欲的に学習に取り組むようになる。

これからの評価をどう構想すべきか   評価規準と評価基準

国立教育政策研究所総括研究官  千々布 敏弥

★目標準拠評価について、評価規準と評価基準の語が存在し、教育現場が混乱している。国立教育政策研究所教育課程研究センターは「評価規準」の語で指導しているものの、「評価基準」の考え方を支持する教育関係者は多い。

★本稿は、評価規準の考え方と評価基準の考え方をそれぞれ解説し、目標準拠評価の目的に立ち返って、両者の特質を見直し、学校現場が今後目標準拠評価に取り組んでいく際の指針を示すことを目的としている。

連載

小学校算数の基礎・基本の指導と評価(19)   授業で大切にしたいこと(2)-力づくで働きかけていく力(2) 元筑波大学附属小学校教諭
正木 孝昌
読書教育(3)   読書指導について 聖徳大学教授
有働 玲子
豊かな人間を育てる授業シリーズ(3)   聞き方初級編(中学校版コミュニケーション・聞く編) 教育臨床研究機構理事長
中野 良顯
だんわしつ 千葉大学教授
上杉 賢士
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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