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- 2024年 11月号 vol.70-11 定価:450円
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- ❶学習評価(3)評価方法-ペーパーテスト、記述式問題、パフォーマンス評価×妥当性・信頼性➋学校におけるトラウマインフォームドケア
特集
❶学習評価(3)評価方法-ペーパーテスト、記述式問題、パフォーマンス評価×妥当性・信頼性/妥当性・信頼性と評価技法
★学習評価の在り方を論じる際には、まず「何のために評価するか」を踏まえたのち「それに適する評価方法」を考えるべきだ。
★評価目的は一般に①形成的評価、②総括的評価、③説明責任があげられるが、忘れてならないのは、④どのような学習が望ましいかだ。評価の目的は評価方法の選択に大いに影響するため、評価方法を選択する際には必ず考慮すべきだ。
❶学習評価(3)評価方法-ペーパーテスト-記述式問題、パフォーマンス評価×妥当性・信頼性/ペーパーテストで使用される客観テストの特徴
★客観テストは採点基準が明確であるので、採点者の恣意性を排除でき、採点の高い信頼性と客観性が確保できる。
★客観テストは細目積み上げ方式によるテスト作成に適しており、基礎的事項の1つ1つに焦点を当て、基礎的学力から比較的高度の学力までを測定できる。また、多くの問題を提示できるので、得点の高い信頼性と解釈の高い妥当性が期待できる。
❶学習評価(3)評価方法-ペーパーテスト、記述式問題、パフォーマンス評価×妥当性・信頼性/客観性(間主観性)と評価技法
★「主観/客観」の区別は、「主観は悪い、客観は良い」、あるいは「客観は悪い、主観は良い」という二分法に陥りがちだ。「間主観性」という第3の見方を導入すれば、素朴な二分法を克服できる。
★評価は判断と測定という複数の面を持つ。記述式・論述式・パフォーマンス評価などは、判断に重きを置く評価技法といえる。複数の判断を重ね合わせ、間主観性を確保すれば、客観性を高められる。
❶学習評価(3)評価方法-ペーパーテスト、記述式問題、パフォーマンス評価×妥当性・信頼性/「パフォーマンス評価」の妥当性と信頼性を問う-理科と外国語科の事例をもとに-
★子どもの多様な学力を評価する方法として、客観テストに加え、パフォーマンス評価など様々な評価方法を組み合わせることが提案されてきた。パフォーマンス評価は子どもの活用力を問うことができる反面、構成概念妥当性や比較可能性の側面で課題が残されていた。これを乗り越える手段として、評価の三角形の考え方を軸としたパフォーマンス評価の運用方法を概説した。
❶学習評価(3)評価方法-ペーパーテスト、記述式問題、パフォーマンス評価×妥当性・信頼性/フランスのバカロレア試験における論述試験の信頼性確保の取組
★フランスの大学入学資格試験であるバカロレア試験は、育みたいものを評価するという妥当性の観点から、論述試験を主とする。論述試験における採点の信頼性を確保するために、採点の観点の共有や要求水準の調整をするしくみがある。これでも完全な信頼性は保証されないが、採点者である高校教員の専門性が社会的に認められているため、採点結果へのクレームは少ない。
❶学習評価(3)評価方法-ペーパーテスト、記述式問題、パフォーマンス評価×妥当性・信頼性/目標準拠評価のためのテストの妥当性・信頼性-中学校数学の1元1次方程式のテスト問題例を通して
★ペーパーテストによる評価は最も一般的に行われている。しかし、テスト作成自体に問題があればその保証は難しくなる。本稿では「知識・技能」「思考・判断・表現」の2観点を測定するテスト問題として、中学校数学の1元1次方程式のテスト問題を例に、評価の妥当性・信頼性を考察し、テスト問題作成の研修について提案する。
➋学校におけるトラウマインフォームドケア/見えない傷つきを理解するトラウマインフォームドケアのアプローチ-「何が起きているんだろう?」の視点でかかわる-
★学校で起こる様々なトラブルや問題は、子どもや家庭のニーズを表すSOSと捉えられる。見えにくいニーズのなかに、「心のけが」とたとえられるトラウマがあるかもしれない。見えにくいトラウマについて、①理解する、②認識する、③対応する、④再トラウマを防ぐ、という4つのポイントで整理し、取り組んでいくアプローチをトラウマインフォームドケアという。セルフケアとチーム支援により、学校の安全を高めていこう。
➋学校におけるトラウマインフォームドケア/学校で見られるトラウマ-アタッチメント、発達障害をめぐって-
★生徒や教師が抱えるトラウマは多岐にわたります。トラウマは、衝撃的な出来事を体験したことで、心の防護壁が壊れてしまうことで生じます。心の防護壁となるアタッチメント(愛着)とは表裏の関係にあります。一方、最近、発達障害を有する子どものトラウマの問題も注目されるようになりました。ここでは、これらについて概観し、学校で必要な対応の基本について考えます。
➋学校におけるトラウマインフォームドケア/トラウマインフォームドな学校づくり
★トラウマインフォームドケア(Trauma Informed Care:以下、TIC)の考え方が日本にも紹介され、医療、保健、福祉、司法などの領域で取組みが始まっている。
★本稿では学校教育の分野での導入の必要性について、米国のACE研究、有害ストレスの影響に関する研究から説明する。日本での導入に向け、学校危機対応の経験はTICの導入につながるが、日頃からトラウマ対応に向け、学校の状況に応じた研修やコンサルテーションの仕組みを構築する必要がある。
➋学校におけるトラウマインフォームドケア/生徒指導・教育相談とトラウマインフォームドケア
★生徒指導・教育相談において、児童生徒理解は重要な鍵となる。的確な理解を行うために子どもを様々な観点から捉えなければならないが、その1つとしてトラウマの視点があげられる。成長の過程でトラウマ体験をする子どもは少なくない。その影響を小さくし、適応的な生活を送れるように支援するうえで、トラウマインフォームドケアの考え方は有効なものである。
➋学校におけるトラウマインフォームドケア/保健室におけるトラウマインフォームドケア
★心身の不調を訴えて保健室にやって来る子どもたち。その背景に逆境的体験があり、トラウマの影響による場合も推測されます。しかし学校では、事象を把握することはむずかしく、トラウマの影響によることが理解されていないため、子どもへの対応は困難となり、連携した支援につながっていない現状があります。子どものトラウマによる心身の健康への悪影響や発達の阻害を最小限にするために、教員がトラウマインフォームドケア(以下、TIC)を学び、「トラウマのメガネ」をかけて、TIC概念に基づく連携した支援をすることが大切です。
➋学校におけるトラウマインフォームドケア/教師自身のトラウマをケアする
★トラウマインフォームドケア(以下、TIC)が必要な状況は、対応する教師にとってもストレスフルであることが多く、教師自身、共依存や二次性外傷性ストレスに注意し、燃えつきないための予防が必要である。そして個人の取組み以上に、個々の教師間の見解の違いを乗り越えて学校全体で共通認識をもち、個人が孤立しない組織体制づくりが望まれる。管理職はこうした校内の体制づくりとともに、必要時は校外の専門機関等との連携を図ることが重要である。
連載
巻頭言/わが国の学習評価で忘れられがちな「妥当性」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
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読解力の育成(小学校実践編)(16)リフレクション型国語科授業の展開①~物語「ごんぎつね」(四年 小学校全社)~ | 筑波大学附属小学校教諭 白坂洋一 |
生徒との対話を通して個別最適な学びをめざす 書く力を中核とした授業改善⑺新しい価値を創出する「論文活動」(2)-「価値」を練り上げる | 神奈川県川崎市立宮崎中学校教諭 町田 憲二 |
言語技術としての「事実と意見の区別」⑻フランス:PISA読解力調査で不振の理由 | 立命館大学准教授 細尾萌子 |
宿題と家庭学習(2)宿題とは何か-教師と保護者の意識から見えたもの- | EduPorte(株)代表取締役・元小学校教員 宮崎麻世 |
「ほめる」を考える(8)見えない行動をほめる-応用行動分析を生かして- | 明星大学教授 竹内康二 |
熟達教師たちの「実践知」を語る(1)「学びへの眼差し」を磨き合う | 日本赤十字秋田看護大学准教授 岩本宏幸 |
「目標準拠評価の実態に関するアンケート」結果 | 「指導と評価」編集部 「指導と評価」編集部 |