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特集
「思考・判断・表現」とその評価
★今日の知識基盤社会では、習得した知識・技能を、実際的で複雑な場面で使えることが重要である。これまでも重視してきた「自ら課題を見つけ、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」を育成するため、今次の改訂では思考、判断した過程を表現するというように、思考と表現を一体的にとらえようとした。そのため、「思考・判断」の観点を「思考・判断・表現」としたのである。
★評価のあり方としては、あいまいな子どもの思考を深め、明確にする形成的評価がまず求められる。パフォーマンス評価は、この観点の評価法として重要である。今後、教科・単元毎に、パフォーマンス評価とその解答実例を収集しいくつかのレベルに分け、ルーブリックやスタンダードを作成する必要がある。
国語科における「思考・判断・表現」とその評価(小学校)
★国語科の評価の改善に当たっては、指導事項の意味するところを『小学校学習指導要領解説国語編』等により確実に踏まえることが必要。
★特定の知識や解釈を、児童の目的や必要とは無関係に教え込むという教師の意識自体を改革することが重要。
★単元を貫く言語活動を明確に位置付け、指導すべき内容を一層明確にして評価を行うことが重要。
★国語科の単元の評価の観点は、そのねらいに応じて設定の仕方が変わる。当該単元ではどの領域を取り上げるか、複数領域を複合させるかなどについての判断が重要。
社会科における「思考・判断・表現」とその評価(小学校)
★「社会的な思考・判断・表現」は、社会的事象の意味について考えたことを言語などで表現する力が身についているかを評価する観点である。
★「観察・資料活用の技能」は、観察・調査したり資料を活用したりして必要な情報をまとめる力が身についているかどうかを評価する観点である。
★新聞や作品などにまとめる表現活動はこれからも大切なものであるが、評価する観点としては「表現」ではなく「資料活用の技能」が中心となる。
★「調べたことを表現する力」と「考えたことを表現する力」は密接に結び付いているため、「社会的な思考・判断・表現」の観点と「観察・資料活用の技能」の観点の棲み分けが課題となるが、その解決は指導のねらいに立ち返ることである。
小学校算数科における「思考・判断・表現」とその評価
★算数科における「思考・判断・表現」の観点名は「数学的な考え方」で、その趣旨は「日常の事象を数理的にとらえ、見通しをもち筋道立てて考え表現したり、そのことから考えを深めたりするなど、数学的な考え方の基礎を身に付けている。」である。現行のものと観点名は変わらないが、趣旨は変わった。考えたことを言葉や数、式、図、表、グラフなどに表し、そのことから考えを更に深めることが強調されている。「数量や図形についての技能」の趣旨にも数学的な表現と書かれているが、これは算数固有の内容として習熟すべき、数や式に表すことや図形をかくこと、表やグラフに表すことなどの技能を意味していることに注意したい。
中学校数学科における「思考・判断・表現」とその評価
★「数学的な見方や考え方」の観点の名に「表現」という言葉を加えなかった。「思考・判断・表現」という観点を設けたのは、思考・判断したことを表現する活動と一体的に評価するためである。「数学的な見方や考え方」の観点では、従来から思考・判断したことを表現する活動と一体的に評価しようとしてきた経緯があり、「表現」という言葉を加えることで誤解が生じることを避けた。
★また「数学的な表現・処理」の観点の名称を「数学的な技能」に改めたのは、「思考・判断・表現」における「表現」との混同を避けるためであり、現在「数学的な表現・処理」の観点で評価している表現に関わる事柄は、今後は「数学的な技能」観点において評価する。
理科における「思考・判断・表現(科学的な思考・表現)」とその評価(小学校)
★小学校の理科では、児童の科学的な見方や考え方が一層深まるように、観察・実験の結果を整理し考察し表現する学習活動を重視する。特に、観察、実験において結果を表やグラフに整理し、予想や仮説と関係付けながら考察を言語化し、表現することがより一層求められる。
★こうしたことを踏まえて、授業を展開する前に、科学的に思考しているのか、それを科学的に表現しているのかというところを明確にして、評価規準として設定することが重要である。また、予想や仮説をもつ段階や、結果から考察し結論を出す段階においては、とりわけ言語活動が関係する。本観点と関連させながら、言語活動の充実という視点からも授業を見直し改善を図る必要がある。
理科における「思考・判断・評価」とその評価(中学校)
★中学校理科では、「科学的な思考」が「科学的な思考・表現」に評価の観点の名称が変更となった。「表現」の表記が移動したからといって、「表現」することすべてが「科学的な思考・表現」に移ったということではない。探究的な学習の中で、生徒がいかに科学的に思考しているか、その考えを表現する場面などから評価することを明確にしたものである。思考したことを表現することは、生徒の考えが深まるというだけでなく、自らの変容に気付くということにもつながるものであり、理科の指導と評価にも生かせるものである。
連載
教えて考えさせる授業(4)中学校国語 | 岡山県井原市立木之子中学校教諭 的場 美絵 |
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坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(53) 小学校五年、図形の性質2 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
これからの国語科教育(8)中学校「書くこと」 | 埼玉県熊谷市教育委員会学校教育課指導主事 田沼良宣 |
これからの理科教育をどうするか(14)中学校三年「運動とエネルギー」 | 広尾学園中学校・高等学校副校長 元筑波大学附属中学校副校長 角田陸男 |
第4回全国学力調査結果の考察(1)小学校算数 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
これからの学習評価(7)適切な評価課題の設定-理科での事例 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
教育・心理検査入門(8)バッテリー活用 | (財)応用教育研究所副所長 堀口 哲男 |
小学校英語活動のポイント(20)「外国語活動」におけるDo’s and Don’ts-その8(評価の留意点と追加の評価観点) | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
だんわしつ/いまのままで「良いか?」 | 元山形大学教授 長南博昭 |
ひとりごと/かくし原動力 | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |