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特集
学校でのキャリア教育の実践と課題
★小学生のときは堂々と将来の夢を語る。中学生では「夢に向かい個性・適性を最大限に伸ばそう」と進路学習を進め、職場体験などを通じて職業生活の一端にふれるものの、学力に応じた進路選択をする者が多い。高校生になると、専門高校以外では小中の指導はまったく忘れ去られ、学力中心の大学選択が主流となる。大学に進学すれば、仕事の内容よりは企業規模・安定度・知名度などが優先される。
★学校卒業後三年内の離職率は七五三現象(中学校70%、高校50%、大学30%)が何年も続いている。小学校・中学校・高等学校・大学でのキャリア教育(進路指導)で継続的に成果を上げるためには、どのような教育を進めたらよいか。目標・連携・方法などあらためて検証していきたい。
小学校におけるキャリア教育の実践
★平成30年4月から小学校の新学習指導要領の移行実施措置が始まった。学習指導要領第1章総則第4の1の(3)にある特別活動における学級活動にキャリア教育が新設された。
★先行実施は、特別活動における体験活動の充実、総合的な学習の時間におけるプログラミング教育、特別の教科 道徳、外国語科(中学年では外国語活動)、等である。
★そこで、カリキュラム・マネジメントによる見直しを行い、「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った授業改善へ向けて、学校教育における質の高い学びの実現を目指した。そして、児童が学習内容を深く理解し、資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続ける教育へと転換が始まった。しかし、小学校は毎年、約1万5000人の新規採用教員が配置される。指導力の育成をどう図っていくかも参考にしていただきたい。
中学校におけるキャリア教育の実践
★中学校学習指導要領に「キャリア教育」という文言が加わり、特別活動を要として、各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ることが求められるようになった。
★職場体験の実施日数について、五日間という期間は、中学生に何らかの影響を及ぼし、自己効力感を向上させる効果がある。
★各教科の指導に「キャリア」の視点を加えることで進路関連自己効力感、進路成熟が向上する。
高等学校におけるキャリア教育の主体的・対話的で深い学び
★高等学校学習指導要領および解説を読み深めると、高等学校における進路指導は、キャリア教育の視点で大きく見直すことが求められている。キャリア教育を推進し、進路指導を充実させるために、生徒たちに、どのような機会を設け、どのような活動を通して成長させることを求めているのかを説く。
★授業にアクティブラーニングを取り込んだ授業デザインをすればよいわけではなく、主体性をもって活動に臨み、コミュニケーション能力を駆使して活動し、学びに対する内的動機をもって学びを深めていくことが重要である。
キャリア教育の視点から考えられる大学生への支援
★本稿では、大学教育でのキャリア教育の実施について具体的な内容の一例を紹介し、解説する。
★「大学設置基準第42条の2項」が平成23年4月1日に施行され、設置認可審査がこれらを踏まえて行われるようになった。そのため、多くの大学においてキャリア教育が教育課程上で実施されるようになっていった。
★厚生労働省は、大学におけるキャリア教育の推進を支援するため、「大学生のための『キャリア教育プログラム集』」を作成した。この中で、キャリア教育で培う「基礎的・汎用的能力」を高めることができるように工夫したガイダンス・プログラムをその一例として提案している。
★このプログラムの取り上げている範囲、内容、学習方法の構造やそれらの教育的な効果について、解説を加えながら紹介する。
進路選択に対する自己効力感とその育成
★バンデューラの提唱した自己効力感は、ある行動を自分ができるかどうかという判断であり、行動や行動の変容に影響を与える要因である。これは進路選択に関する行動にも適用され、進路選択行動の規定因として注目されている。
★本稿では、まず自己効力感および進路選択に対する自己効力感の概要を紹介する。自己効力感は目標となる具体的な行動と切り離すことができない点を特に強調する。その後、主体的・対話的で深い学びを意識した自己効力感の育成について二つの留意点をあげる。ひとつは目標となる進路選択行動と体験の場の設定に関する点であり、もうひとつは学びを自己効力感につなげることに関する点である。
進路相談場面でのキャリアカウンセリング理論の活用
★進路相談場面でのキャリアカウンセリング理論の活用を考える際には、進路指導からキャリア教育への変化と連動したキャリアカウンセリング理論の変遷の説明が必要となる。なぜなら、ここには社会経済状況の大きな変化も影響を与えているからである。その上で「主体的・対話的で深い学び」の時代におけるキャリアカウンセリング理論とはどういうものかを考える。ここでも「主体的・対話的で深い学び」と連動した理論面での大きな変化がある。それはひとことで言えば、主体的・対話的なキャリアカウンセリング理論への変化である。では、その内容はいかなるものか。また、具体的な実践にどう結びつくのか。本稿では「主体的」「対話的」の両面から述べる。
発達障害のある子どものキャリア教育
★近年、発達障害のある子どもが普通学級に在籍する割合は、約6.5%に達しているが、発達障害についての理解が十分ではないことが多く、教師もその対応に苦慮している。そこで、まず発達障害の特徴を理解することが大切である。この発達障害は、自閉スペクトラム障害(広汎性発達障害とも呼ばれる)、注意欠如・多動性障害(AD/HD)(注意欠陥多動性障害とも呼ばれる)、限局性学習障害(LD)(学習障害とも呼ばれる)の三種類に大別できる。
★発達障害のある子どものキャリア教育の理念や目標については、発達障害のない子どもと同様であるが、特に、発達障害のある子どもの場合には、本人の特徴のうち、得意な面を最大限生かせるようにキャリア発達を促すことが大切である。その際、就職の支援を行う場合には外部機関とのネットワークを活用することが有効である。
連載
キャリア教育における「主体的・対話的で深い学び」の本質は何か | 早稲田大学教授 三村隆男 |
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「教師力」アップセミナー(7)学級経営を考える | 帝京平成大学教授 白鳥 信義 |
QUを活用したPDCAサイクルの推進(7)継続のポイント(2)自主・向上性と同僚・協働性を統合して高める | 東京福祉大学助教 河村 明和 |
新教育課程の評価を考える(17)評価基準から指導への試案-国語の「書くこと」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
新教育課程の評価を考える(18)学習評価ワーキンググループに対する関係諸団体からの意見を受けて | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
『きめる』学びで知的にたくましい子どもを育てる-主体的・対話的で深い学びを実現する授業づくり-(7)一人一人の「きめる・きめ直す」を生かす図工授業のプロセスデザイン | 筑波大学附属小学校教諭 笠 雷太 |
説明文・意見文を書くことの指導(7)読むことの指導と関連付けた書くことの指導-中学校 | お茶の水女子大学附属中学校教諭 渡辺光輝 |
特別支援教育に生かすペアレンティング(7)お互いを尊重して協力しあう体制・役割分担(1) | 子育て科学アクシススタッフ 上岡勇二 |
構成的グループエンカウンター再入門(8)インクルーシブ教育における実践 | 公立小学校教諭 大迫真美 |
コミュニティにおけるガイダンスカウンセリングの展開(7)教育相談員としてのガイダンスカウンセリング | 埼玉県立高校教育相談員 利根川敏子 |
成熟した学習者をめざして(6)仲間と学ぶ | 早稲田大学教授 舘岡洋子 |
これからのキャリア教育(7)教科を通したキャリア教育の実践 | 筑波大学教授 藤田 晃之 |
講座カウンセリング心理学(7)カウンセリング心理学におけるリサーチの領域とレベル | 東京成徳大学名誉教授 國分 康孝 |
教育統計・測定入門(70)項目反応理論-項目母数の推定 | 法政大学教授 服部 環 |