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特集
次期教育課程で求められるカリキュラム・マネジメントとは
★カリキュラム・マネジメントは、各学校において教育課程を核に協働を生み出し、経営資源を投入し、計画・実施・評価・改善をつなげ、教育内容の組織化などを通して学校教育目標の実現を図る営みである。それは、学校の主体的・自律的な取組を重視する教育哲学や経営哲学の基盤にした一連の系譜に位置づく。それは、定式化された経営手法としてとらえるのではなく、学校や教育課程に関わるマネジメントのあり方への問いかけとしてとらえることが大切である。その実践にあたって、①教育課程について共通理解を図る、②授業を振り返るシステムとして指導計画の活用を図る、③学校評価とカリキュラム・マネジメントの関係を整理する、などに留意する必要がある。
カリキュラムマネジメントの目的と方法
★カリキュラムマネジメントはシステム思考に基づく。児童・生徒の教育的成長という目的に資するように、教育目標、カリキュラム、組織構造、学校文化、学校外の要因等のつながりをデザインしてマネジメントする。教育目標は特に重要であり、折にふれ再検討し関係者間で共有する。カリキュラムは、教育目標達成のための手段である。評価を核にしたマネジメント・サイクルにより、効果的・効率的なカリキュラムを創りつづける。その際、カリキュラム文書に日常の気づきを記録することが有効である。また、単元レベル等、長いスパンで授業をとらえることを前提として、教科横断的なカリキュラム編成により、教育課程全体で必要な資質・能力を育成する。
カリキュラム評価の目的と方法
★カリキュラム評価は文字どおり「カリキュラム」を「評価」する意味だが、「カリキュラム」や「評価」の定義は論者により異なる。「カリキュラム」は「教育課程」の単純な言い換えではないし、「評価」も目標の達成度を確認する作業とは限らない。カリキュラム評価の目的は、運用中のカリキュラムの改善、および既存のカリキュラムに関する良し悪しの決定に大別できる。カリキュラム評価に、唯一絶対普遍の方法は存在しない。カリキュラムの実施に関わる情報を広く集め、目標の達成度を確認しつつ、望外の結果を発見する ― これがカリキュラム評価の「キモ」であり、次のカリキュラム・マネジメントのサイクルへとつなげる、「勘所」となる。
小学校におけるカリキュラム・マネジメントの実践事例
★北条小学校では、カリキュラムの開発や更新・実践の検証・振り返りを「プラン実践検証サイクル」(PDCAサイクル)と呼び、「指導の平準化」をねらいとし、学習指導案や資料を蓄積したり、実践検証を日常的に行ったりしている。このカリキュラムを管理しているのが、カリキュラム管理室である。本校において、カリキュラム管理室の運営が、カリキュラム・マネジメントそのものと言える。今年度も「プラン実践検証サイクル」によって職員全員による改善と開発を繰り返し、学校長から示された学校教育目標の具現化と北条教育の更なる深化・発展をめざし、実践を続けているのである。
中学校におけるカリキュラム・マネジメントの実践事例
★校内研修で授業研究を行う際に、教科の特質にこだわるあまり、授業について踏み込んだ話し合いをすることがむずかしかった。そこで、「教科の壁」を越えて取り組める授業理論を核として、授業改善を中心とした校内研修に取り組んだ。書籍を読み込む、理論の提唱者から直に指導を受ける、先進校の訪問によって全員が共通の授業イメージをもつということに重点を置き、全員が同一の授業理論を身に付けていった。授業の構造や時間の枠組み、授業と連動した家庭学習、板書の様式などを統一し、研究授業の準備や事後の協議に全員が参加することで、小規模校の弱点を強みとする「教科の壁」を越えた校内研修の仕組みをつくることができた。
幼小中一貫校および小中連携校におけるカリキュラム・マネジメント
★次期学習指導要領改訂に向け、カリキュラム・マネジメントの必要性が問われている。これからは、管理職のリーダーシップのもと、各校独自の教育課程の編成が求められる。本稿では、広島大学附属三原学校園(幼小中一貫校)、広島大学東雲小学校・中学校(小中連携校)の特徴(意図的な学年区分の編成)を活かしたカリキュラムマネジメントの工夫点について述べる。
連載
QUを活用した学級づくりと個別支援(7)被承認感が少ない学級の立て直し | 昭和女子大学准教授 滝澤洋司 |
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特別支援教育のこれから(7)教育と医療の連携 | こころとそだちのクリニック むすびめ院長 田中康雄 |
学校力・教師力アップセミナー(6)いじめに対処する | 公立学校スクールカウンセラー(元富山県南砺市立福光中部小学校校長) 水上 和夫 |
教育評価のこれから(7)探究的学習とポートフォリオ評価法 | 立命館大学准教授 細尾萌子 |
小中国語の「書くこと」(6)小学5年生 | 筑波大学附属小学校教諭 青山由紀 |
感度を高める言葉の教育(31)二つのタイプの受身文 | 筑波大学附属小学校教諭 青山由紀 |
小中学校の理科(6)「My Tree(ぼくの木、わたしの木)」の継続観察による自然に対する感受性と表現力の 育成 | 創価大学教職大学院准教授 大関 健道 |
教えて考えさせる授業(3)アクティブ・ラーニングと「教えて考えさせる授業」 | 東京大学名誉教授・帝京大学中学校高等学校校長 市川 伸一 |
コンピテンシー・ベイスの授業づくり(3)理科授業におけるコンテクストの意義を考える | 静岡大学教授 丹沢哲郎 |
これからの英語教育をどうするか(6)中学校における「授業は英語で行う」の指導-その考え方および指導の基本と留意点 | 静岡大学教授 丹沢哲郎 |
道徳をこれからどう指導したらよいか(14)「問題解決的な学習」を生かした道徳授業 | 熊本市立富合中学校長・前西山中学校長 大窪裕次郎 熊本市立西山中学校研究部長 三重野辰典 |
シティズンシップ教育(6)日本におけるシティズンシップ教育の展開可能性 | 京都教育大学教授 水山光春 |
教育統計・測定入門(53)構造方程式モデリングによる相関係数の検定② | 法政大学教授 服部 環 |
だんわしつ/高大接続テスト、30年の遅れをとり戻す時 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |