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特集
キャリア教育の導入の経緯、現状と今後
★一九九九(平成十一)年、中央教育審議会は、若年者雇用をめぐる強い危機意識を背景としつつ、小学校段階からのキャリア教育の推進が提言した。しかしその後、若年者雇用の状況は急速に変容している。キャリア教育を正しく理解するためには、まず、新卒者の「ニート・フリーター対策」としての草創期のイメージから脱することが必要である。
★今日のキャリア教育は、「知」があらゆる領域での活動の基盤となる「知識基盤社会」を前提としつつ、そのような社会に参画し、社会的・職業的自立を図っていくうえで必要な力を育てることを目指している。その実践の中核となるのは、各校の実態に即した「基礎的・汎用的能力」の育成である。
先進諸国におけるキャリア教育の動向と日本で望まれるキャリア教育
★1990年代以降、先進諸国の産業構造・職業構造・就労構造は、従来とは全く異なるものとなった。その変化は、情報化・グローバル化・サービス経済化で説明できる。今現在、キャリア教育を考えるにあたっては、こうした変化を真正面から受け止める必要がある。21世紀のキャリア教育とはどのような論理で組み立てられるものなのか。本稿では、ヨーロッパやアメリカのキャリア教育研究に基づいて、キャリア教育に関する比較的新しいトピック(生涯キャリア支援、キャリア構築理論、普通教育・職業教育とのかかわり)について取り上げたい。
企業の求める人材の資質、能力と公教育への期待
★わが国企業の経営者は、技術力に一層磨きをかけイノベーションを連続的に創出し、グローバルに自社製品・サービスを展開させていくことへの意識が強い。その経営戦略の鍵を握るのは人材である。多様な価値観、個性を活かし、イノベーションを起こしグローバルに活躍できる人材を確保、育成できる企業こそ、世界の顧客から支持され生き残っていく。経団連が行ったアンケートによれば、グローバルに活躍する人材に求められる素質、知識・能力として上位にあげられたのは、「既成概念にとらわれず、チャレンジ精神を持ちつづける意識」「外国語によるコミュニケーション能力」「海外との文化、価値観の差に興味・関心をもち、柔軟に対応する力」であった。こうした素養は、初等・中等教育から大学教育にかけて多様な体験から育まれるべきものであり、産業界の協力のもと教育機関での取組の充実が図られる必要がある。
小・中・高でキャリア教育はどう展開したらよいか
★キャリア教育の定義の変遷から、そのウエートが「能力」と「態度」の間を揺れ動き、現在は、「基礎的・汎用的能力」の育成に主眼が置かれている。「態度」の育成についても配慮する必要がある。
★キャリア教育ではその中核となる進路指導の6つの活動の機能を構造的に理解しておく必要がある。特に、進路指導がない小学校において重要である。
★教科指導をキャリア教育の視点で行う際には、まず、内容と方法でアプローチを考え、次に、教科の目標達成を最優先し、最後に、教科の目標とキャリア教育の視点を関連付け教育活動を創出する。
神奈川県立湘南台高等学校におけるシチズンシップ教育
★教育のあるべき姿は、その社会の姿に規定される。多くの社会的課題を抱える21世紀の日本社会は、「社会の引き受け手」である市民の育成を要請している。このような中で、シチズンシップ教育は、「社会の引き受け手」を育てるという公共的な視点から、公教育のあり方を再定義する意義や可能性がある。学校教育の理念や方向性としてシチズンシップ教育を広くとらえる「広義のシチズンシップ教育」を進めている神奈川県立湘南台高等学校における実践例を紹介する。
他教科・他領域と連動したキャリア教育の実践(中学校)
★他教科と連携しながら進める“基礎的・汎用的能力”の育成の推進。より効率的に指導するために本校で進めている他教科との連携の方法。
★キャリア教育の視点を踏まえた本校独自の取組(きらめき手帳・志きらめく探究活動、伝統文化体験)による“基礎的・汎用的能力”の育成。
★ひとつのデータにのみ頼るのではなく、本校独自のアンケートや全国学力・学習状況調査など各種データを用いることでクロスした分析を行う。
★成果と課題:他教科を意識することで生まれる横断的なつながりと分析方法の検証の必要性。
日常の教育活動の延長線上で―教科の中でキャリア教育(中学校)
★「これまで進めてきた研究をもとに、日常の授業の中でできるキャリア教育とは、どのようなことだろうか。」という視点に立ち、取り組みを始めた。研究のための研究だけは避け、他校でもすぐに実践できるようなものにしたいとも考えた。教科等の授業の中でキャリア教育の視点をもって進めることにより、生徒たちの表現力を高めることができ、確かな学力を身に付けさせることができるとの仮説のもとに研究を進めた。授業改善によりキャリア教育ができることを明らかにすることができたと考えている。
自己有用感を高め、自分の役割を果たそうとする意欲や態度を育てるキャリア教育の実践(小学校)
★さまざまな活動をキャリア教育として意味づけていくために、教師自身の中に一つの筋となるものがなければならない。
★学校生活の中で、自己有用感を高め、自分の役割を果たそうとする意欲や態度を育てていくことが大切である。●高学年…級友からだけでなく、異学年からも認められることにより、高学年としての役割を自覚し、役割を果たそうとする意欲や態度を育てる。●低学年…自分の役割に対する意欲付けを行い、自分の努力や友達の助けで最後までやり遂げたという経験を積み重ねる。
連載
21世紀をよりよく生きる資質・能力の育成(7)21世紀をよりよく生きるのに必要な資質・能力を育てる方法-学習科学の諸成果 | 東京大学教授 白水 始 追手門学院大学講師 河﨑美保 |
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教師力アップセミナー(6)生徒理解をどう進めるか | 千葉市立こてはし台中学校長 堀米 宏 |
学級づくり実践セミナー(7)学級づくりといじめの問題 | 早稲田大学教授 河村 茂雄 |
教育・心理検査を上手に活用しよう(7)KABC-Ⅱの解釈と活用 | 早稲田大学教授 河村 茂雄 |
感度を高める言葉の教育(7)留学生はオノマトペが苦手 | 早稲田大学教授 河村 茂雄 |
小学校算数の発展・応用を学ぶ授業をつくる(26)5年 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
小学校理科の授業づくり(30)5年B(4)「天気の変化」における学習展開のポイント | 京都文教大学准教授 大前暁政 |
どうする?小学校音楽の授業(10)思考力を育てる音楽づくり | 筑波大学附属小学校教諭 平野次郎 |
教育測定・統計入門(30)クラスター分析-似たものどうし集める | 法政大学教授 服部 環 |
学校の法律問題(19)熱中症への対応責任 | 日本女子大学教授 坂田 仰 |
教育の窓/日本の教員の長時間勤務の改善を! | 教育臨床研究機構理事長 中野 良顯 |
だんわしつ/鳥海昭子という歌人がいました | 日本児童文芸家協会会員・東北文教大学講師 高橋まゆみ |