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特集
教科書をどう生かすか-可能性と限界を踏まえて
★本稿では、教科書の特徴として5点を挙げ、その可能性の方向を整理した。第1に学習指導要領の具現化として、生徒の実態に応じた教材配列や学年を超えた系列化を意識化した活用、第2に実践的な智慧の結晶としての文化的価値を踏まえた活用、第3には一人1冊の所有をふまえ協働的学習での他教材とつないだ活用、第4に紙の二次元世界の良さを生かして具体物教材を含む学習環境とネットワーク化しての活用、第5に完成された教科書言葉と生活実感から生まれる具体的言葉をつなぐことで深い理解を目指した活用である。
教科書を生かす-小学校国語
★「教科書を生かす」という観点に立ち、「習得する」―「活用する」といった学習の流れを意識した授業づくりが必要である。
★東京書籍の教科書では単元の最後に「言葉の力」が載っている。「自然のかくし絵」(東京書籍三上)の導入場面を例に「言葉の力」を意識した授業づくりのあり方を示す。
★全学年の「言葉の力」を校内研などで共通に理解することが重要である。そのために、「言葉の力」を項目に整理し、表にするなどの工夫を行っていく。
★以前に用いた学習材をプレ教材として用いる発想で教科書を生かすことが重要である。
中学校国語-教科書を生かす俳句指導
★これまでの教科書を教える学習では、俳句に込められた表現の深さを十分に味わうことができなかった面がある。
★新しい教科書では、①親しみやすい俳句が取り上げられている。②創作と鑑賞のスパイラルで指導の充実が図られている。③俳句のコミュニケーションを位置付けている。などの創意工夫が見られる。
★新しい教科書を生かした俳句指導を行うためには、多くの俳句を「批評の言葉」で分類する学習活動を行うとよいであろう。
小学校社会科-教科書に掲載された資料の効果的な活用法
★社会科の教科書や地図帳、資料集に掲載されている資料(史料)や写真等は、活用の仕方しだいで児童の主体的な学習を保障することができる。そのためには、教科書の中心資料を精選・選択して授業に提示する必要がある。中心資料の見極めは教師の責務であり、それは綿密な教材研究により可能となる。
★地図帳も社会科の教科書である。4年生から配布される地図帳は地形や地名の理解だけでなく、5年生の産業学習や6年の歴史の授業でも有効に活用できる。ここでは特に6年の歴史学習における地図朝の効果的な活用法を紹介する。
中学校社会科-新学習指導要領に基づいた学習指導の在り方と新しい教科書の扱い
★平成20年版の中学校社会科の学習指導要領では、言語力を育成すること、基礎的、基本的事項の「習得」や「活用」を通して、思考力・判断力・表現力を育成することが求められた。このことは、公民的資質の育成をめざす社会科の本来の目標に沿った内容になった。そのため、社会科の授業は事実認識の習得にとどまるのではなく、習得した知識や技能を活用し、思考力・判断力・表現力の育成に結びつけた指導を行うことが必要である。したがって、教師は、教科書を教えるのではなく、教科書をどう活用したらよいかを考えて指導すべきである。
小学校算数
★子どもたちの学力を確かなものに、そして豊かなものにとの願いが込められ、教科書は作られている。教科書の中身からは、紙面の限界に挑戦した地道な取組がうかがえ、子どもの興味・関心を引き出す工夫、基礎基本の定着を図る工夫、読解力・活用力の育成に着目した工夫、系統性を明らかにする工夫、課題解決力を育てるための工夫等を読み取ることができる。
★こうした教科書の工夫や特徴を生かし、子どもの意欲ある取組を育み、基礎基本の定着を図り、数学的な思考力・表現力を培うよう、教師自身が日頃から研鑽に励んでほしい。
中学校数学
★新しい教科書のもととなる学習指導要領は、教育基本法および学校基本法の2つの上位法の改正を受けて改訂されている。そこでは、知・徳・体のバランスをとること、基礎的・基本的な知識・技能、思考力・判断力・表現力等および学習意欲の3つを教育の目的とすることが位置付けられている。教科書には、その主旨が、随所に、ふんだんに、盛り込まれている。
★教科書の問題からさらに「問い」を生み出す、個に応じた指導を工夫する、「わかる・できる」学習意欲を高める、数学的活動の充実、家庭との連携、ICTの活用、などを考慮して、新しい教科書を上手に生かしていきたい。
小学校理科
★理科において、時に教科書は邪魔者扱いされたり、万能扱いされたりする。その考え方は両方ともに弊害があると思っている。問題解決を中心に学習を進める上で、新教科書は大変参考にしやすくなった。この機会に、自然体験を基本にした、より効果的な教科書の扱い方を考え直してみたい。
中学校理科
★新しい学習指導要領では、改訂に当たっての基本的な考え方として4点を挙げている。
★科学に関する基本的概念の定着については、教科書にどのように反映しているかを把握し、3年間を見通した指導を行いたい。
★科学的な思考力、表現力の育成にあたっては、結果を分析して解釈する場を充実させたい。
★科学を学ぶ意義や有用性については、学んだことを生徒自身が活用することを通して実感させたい。
★科学的な自然体験の充実では、演示実験などを通してより多くの実験を経験させるとともに、ものづくり、継続的な観察や定点観測等に取り組ませたい。
★指導計画をつくる主体は教科書ではなく、やはり教師である。
中学校外国語
★新入生を迎えるにあたり、これまで体験した「外国語活動」から新たな教科としての英語学習に円滑に接続させるために、生徒の意識変革の必要性とその具体策とを述べた。
★4技能を統合した活動は、1回の授業でその技能すべてを指導するのではなく、家庭学習を含めた年間の指導の中で実現するべきで教科書の課題もその視点でよく研究していただきたい。
★最後に従来の「コミュニケーション活動」は本来の意味から外れた面があり、これからの文法指導と言語活動の在り方、生徒の言語活動を評価する指針を立てるうえで参考になる考え方を示した。
連載
学校で取り組む特別支援教育(1)支援教育をめざした学校長ができること | 神奈川県秦野市立本町中学校長 古屋 茂 |
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これからの小学校国語の授業づくり(7)「読むこと」1年生-説明文 | 筑波大学附属小学校教諭 青山由紀 |
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(64)-小学校6年、反比例 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
これからの小学校社会科の授業づくり(3)5年 | 東北福祉大学特任教授 有田 和正 |
思考力・判断力・表現力を育てるパフォーマンス課題(1)パフォーマンス課題と「本質的な問い」 | 京都大学准教授 西岡 加名恵 |
中学校外国語科の評価(7)「読むこと」の言語活動とその評価2<黙読> | さいたま市立南浦和中学校教頭 柳澤登紀男 |
小学校英語活動のポイント(30)PDCAサイクルによる「外国語活動」の運営の在り方と方法-その10(指導案作成の基本6) | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
学校の法律相談(7)厳しくなった個人情報の取扱い | 国立教育政策研究所名誉所員 菱村幸彦 |
だんわしつ/持続発展教育と郷土学習 | 二葉看護学院ほか非常勤講師 小田 勝己 |
ひとりごと/隠し味 | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |