月刊誌 指導と評価

2007年 10月号
  1. 2007年 10月号 Vol.53-10 No.634   定価:450円
特集
「行動」の評価を考える
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特集

児童生徒の行動評価の意義と活用

埼玉県立大学教授  石田 美清

★児童生徒の行動は、指導要録、通信簿、補助的な記録簿に記録され評価されている。行動を記録し評価することは、「生きる力」を育成するだけでなく、学校教育の改善の観点からも大切である。

★将来の「生きる力」の育成や道徳教育だけでなく、開かれた生徒指導のもとで学校が説明責任を果たすことができるよう、学校規律の維持、問題行動対策という観点から、行動の記録、評価、活用を見直す必要がある。

★これまで「あたりまえのこと」を前提に生徒指導が行われてきたが、価値観や行動様式の多様化とともに、行動の評価項目や評価方法を検討していく必要がある。

「行動の記録」の変遷

文教大学学園長・応用教育研究所所長  石田 恒好

★「行動の記録」の「行動の状況」の項目は、社会人、市民として必要な特性で成っている。改訂の際には、「新しい教育課程でめざすもので欠けているもの」「最近の児童生徒の行動で気にかかるものへの対応」などを考慮して、改めたり、加えたりして決定する。最近話題になっている愛国心、規範意識をどう扱うかが、次の改訂での課題となる。

★「評定」の仕方が、昭和二三年、昭和二四年では相対評定であったのが、現在では絶対評定である。絶対評定は、大変むずかしく、教師が得意としている「各教科」の「評定」も、上級学校への入試の際に、資料としては信頼できないといわれている。「行動」においておやである。「十分満足」の状態を具体的に示す以外に、正す道はない。

「行動」を評価する方法   「行動の記録」を中心に

応用教育研究所理事長・筑波大学名誉教授  櫻井 茂男

★「行動の記録」の記入の仕方について説明し、「行動の記録」の行動が「学校生活」における子どもの行動であることを強調した。

★「行動の記録」の項目評価では,これまでの実践報告などから、まず子どもの発達を踏まえた趣旨にそって「行動目標」を作成し、次に行動目標よりさらに具体的な行動である「チェック項目」を構成して評価するという手順(案)を提示した。

★行動の評価法として、教師による観察(他者評価)、子どもによる自己評価、子どもによる相互評価を説明した。

★「行動の記録」でも客観性のある評価を行う重要性を述べた。

「行動」記入の実際(小学校)

兵庫県西宮市立夙川小学校教諭  牧野 天志

★通知表における行動の評価の目的は、学校が大切にしている目標を児童や保護者に示すこと、その目標は、「次の学期はがんばろう」と意欲をもったり、「この点は自分でもよくやった」と自己肯定したりすることにある。

★そこで、児童と教師が面談して評価を検討する「評価の時間」を設定した。

★評価基準に照らして、児童が自己評価し、教師との面談において、教師の評価とつきあわせて評価を検討する。教師は、教師評価の根拠を説明しながら、児童に納得させたうえで評価を訂正させたり、逆に、児童の主張を受け入れたりすることを大切にする。

★この評価活動で、次学期の意欲や自己肯定感、適切な自己評価力を養うことができる。

「行動」記入の実際(中学校)

東京都教職員研修センター教授  谷合 明雄

★行動の記録は、各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間、その他学校生活全般にわたって認められる生徒の行動について、各項目ごとにその趣旨に照らして、十分満足できる状況にあると判断される場合には○印を記入することと、所見をもって記載する。

★評価にあたっては、各項目の趣旨および評価の観点を確認し、具体的な生徒の行動の評価に活用していく必要がある。とくに、評価の観点を十分検討しておく必要がある。

★表面的な生徒の言動のみに振り回されることなく、生徒理解を深め、生徒の心の内面を理解することが重要である。

★行動の評価は、連続する指導の過程で生かされて初めて意義がある。是々非々の指導や、指導の適時性、指導の見通しに配慮した評価が大切である。

ソーシャルスキル教育と行動の評価

東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・東京学芸大学教職大学院特任教授  大熊 雅士

★ソーシャルスキルトレーニングの評価は、一人一人の子どもがどの程度スキルを身につけたか評価することではない。子どもが自ら自分自身にどの程度ソーシャルスキルが身についているか見きわめ、その上で、身についていない原因やなかなかできない理由を考え、次にどのようにすればできるようになるか、自ら考えられるようにすることが大切なのである。

★そのため、教師は意図的に授業中や授業後に、目標設定や、振り返りの場を設定し、子ども一人一人が自分自身の成長の様子を確かめられるようにして、意欲的にソーシャルスキルを身につけられるように工夫しなければならない。

道徳教育における評価の課題と展望   子どもの自己評価を評価する

武庫川女子大学教授  押谷 由夫

★道徳教育における評価は、次の三つの側面から考える必要がある。1.どの程度道徳学習や道徳的実践ができているか。2.どの程度道徳的価値の自覚を深めているか。3.どの程度自己評価を深めているか。

★指導要録の「行動の記録」の評価項目は、道徳教育の指導内容と関連が深い。道徳の時間をかなめとして学校教育全体において取り組まれる道徳教育の、行動面に現れた実態を評価するという意味合いが強い。項目は、子ども一人一人の行動に表れる個性やよさを見いだす窓口でもある。

★子どもが、自分の人間観、自己観、他者への感情移入の実態、自分を客観的に見る力をどう自己評価しているかを評価することが大切である。

道徳の実践記録

埼玉県越谷市教育委員会主任指導主事  長井 圭子

★道徳教育における評価は、児童生徒一人一人がもつよりよく生きる力を信じ、受容し、そのあり方や生き方を形成的に評価していく個人内評価に基づく。

★児童生徒の道徳性形成にかかわる評価には、実態把握のための事前評価、変容を評価していく形成的評価、長期的視点に立った総括的評価を取り入れていくことが必要である。と同時に、指導計画や指導法の修正・改善のための評価活動も平行して実施していくことが望ましい。

★心のノートは、児童生徒の発達段階に即して活用していくことが大切である。

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