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特集
子どもの倫理観を育てる
★子どもの倫理観の育成を、社会生活を行ううえでの規範意識の育成という側面から見ていくと、今日とくに、真の自律性の確立、集団や社会の一員としての自覚を深める、国際化時代における共生のあり方を身につける、といったところに意義が見いだせる。
★ところが、今日の子供たちの社会規範やルールへの対応を見ると、十分な発達が図られていない。その実態を踏まえながら、社会の規範やルールを大切にする心を育てる教育のポイントについて、日常生活を通しての指導、社会の規範やルールの意義についての自覚を深める学習、社会のルールを自らつくり活用していく学習の3点から論じる。
倫理観を育てる授業
★個々人によってズレを示す多様な倫理観の形成について考えてみる。
★「同化」と「調節」によって、先行的な倫理観から新しい倫理観を形成する図式を示す。
★そうした倫理観を形成するために有効な授業の一つとして、モラルジレンマ授業をあげることができる。
★しかし、モラルジレンマ授業だけでなく、「調節」のための刺激を与える多くの刺激を与える多くの授業方法が有効であると考えられる。
倫理観を育てる実践-非行予防エクササイズ
★倫理観の中でも、「非行をしないこと」を取り上げ、非行を防ぐための実践的な教育方法について述べる。
★ルールを破り続けて非行が進むと、認知面・行動面のいずれにおいても、非行から抜け出すことが容易でなくなる。そのため、非行にいたる前の働きかけが非常に重要である。また、その働きかけは、ピアジェ心理学の「脱中心化」の概念を念頭において行うのがよい。
★倫理観を育み、非行を防ぐための具体的な方法として、「非行予防エクササイズ」を提案する。これは、ワークシートを用いて行う構成的グループエンカウンターである。本稿では、「一つの事件から」と「被害者の気持ち」という二つのエクササイズを紹介する。
倫理観を育てる実践-VLFプログラム
★VLFプログラムは、共感性に乏しく、対人関係に傷つきやすい子どもたちに、「生きる」基盤を与える三つのスキルを獲得させることを目的としている。すなわち、-伝えるスキル:自分の気持ちを相手に伝える、-思いやるスキル:他者の気持ちを理解する、-解決するスキル:対人関係の葛藤を解決する、である。
★豊かに生きるという基盤に、人とかかわる楽しさを経験することは重要である。
★教材としておもに「絵本」が用いられる。子供の発達段階を抑え、四つのステップ(結びつき、話し合い、実践、表現)から構成される。パートナーインタビュー、ペアロールプレイなどの体験ワークを駆使し、考え、感じ、行動しながら、豊かな人間性を育むことに貢献できるプログラムである。
倫理観を育てる実践 自己を見つめ、よりよく生きようとする子どもを育む道徳教育
★本校が平成十五年度・十六年度に行った研究について、「基本的な研修」「主題にそって子供たちを育むために考え、実践した研究」「付随して行った実践」に分け、まとめている。
★「主題にそって子どもを育むために考え、実践した研究」は、「総合単元的な道徳の授業」「自作資料の創作」「ステップアップ授業研究」「評価について」「ティームティーチング指導」という項目で整理している。
★また、「付随して行った実践」では、「掲示板の活用」「心のパネル」「三つの合(愛)言葉のチラシ配布とのぼり」「ゲストティーチャー」「道徳便り『心のとびら』」という項目で整理している。
倫理観を育てる実践 教科やホームルームアワーの中で育てる
★学校における教育を考えるとき、個人や集団の諸能力を伸ばすことも大切であるが、同時に、豊かな人間性の育成に力を入れていくことも大切である。
★学校で育むべき「豊かな人間性」とは「良心」「協調性」「思いやりの心」の三つだと考える。これらの能力は、道徳や特別活動の時間だけでなく、授業時間の大半を占める各教科の授業の中でも伸ばしていくようにしたい。
★また、いろいろな行事の準備に充てる時間の中では、できる限り生徒の自主性を尊重し、リーダーの養成はもちろんであるが、リーダーへの協力や仲間同士の協調性を育てるような指導をしていきたいものである。
アメリカにおける倫理観を育てる教育
★アメリカにおける子どもの倫理観を育てる教育として、キャラクター・エジュケーションに焦点を当て、その発展と特徴と課題を明らかにする。
★キャラクター・エジュケーションの特徴は、-中核的な倫理的価値を育てる、-キャラクターを総合的に定義する、-総合的・意図的・事前対策的に介入する、-思いやりの共同体をつくる、-道徳的行動を実行する機会を用意する、-学業カリキュラムを改善しキャラクター・エジュケーションを組み込む、-セルフ・モチベーションを高める、-教職員がモデルになり、自らのキャラクターを成長させる、-学校のリーダーが率先して長期的取り組みのシステムをつくる、-家庭、地域と連携する、-プログラムの効果を測定する、ことである。
★今後の課題として、文化的遺産の教育、思いやりの共同体、平和教育、ソーシャル・アクション、ジャスト・コミュニティ、倫理的探求などのオルタナティヴから学ぶ必要がある。
少年の薬物問題にみる希望喪失時代
★薬物問題は深刻化している。罪悪感をあまり感じない錠剤型などの広まり、“脱法”ドラッグの取り締まりの遅れ、インターネット販売など入手の安易化などが進み、警察も把握できない世界がひそかに広まっている。
★薬物を経験する若者は、「悪いとわかっているがやってしまった」ケースが多い。こうした少年たちは、明日に希望をもてない、あるいは苦しくとも耐えていけるだけの「生きる場所」がないのではないか。
★対策として、ごく早い時期から学校教育で、薬物乱用の恐ろしさを展開することが大切だ。根本的には、「薬物などに頼らなくても、少し我慢すればもっと楽しいことがたくさんあるのだ」という希望をもてるようにすることだ。
連載
作文指導(5) 豊かに広がる書く学習の場 | 千葉大学教授 首藤 久義 |
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授業をつくる(3) 小学校算数科「発見する喜びを味わわせる授業づくり」 | 筑波大学附属小学校教諭 盛山 隆雄 |
学習指導に役立つ外国文献紹介(5) メタ認知と学習(2) | (財)応用教育研究所所長 辰野 千壽 |
諸外国の初等中等教育改革の動向(6) 韓国「私教育費軽減政策にみられる公教育正常化への取り組み」 | 文部科学省生涯学習政策局調査企画課専門職 金子 満 |
私の教育評価実践(4) 読む力を育むパフォーマンス課題と長期的ルービック-小学校国語 | 鳴門教育大学附属小学校教頭 宮本 浩子 |
標準検査を活用した教育実践(2) 感情の起伏が激しい子の指導 | 元小学校教諭 小嶋 洋子 |
だんわしつ | 早稲田大学名誉教授 中嶋 博 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |