月刊誌 指導と評価

2024年 1月号
  1. 2024年 1月号 vol.70-1 No.830  定価:450円
特集
❶AI時代の学校教育➋不登校の子どもの支援
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特集

➊AI時代の学校教育/AI時代の到来

東京学芸大学教授・日本教育工学協会会長  高橋 純

★生成AIの概要を説明した。これまでの情報社会やコンピュータの歴史を振り返り、生成AIがもたらす未来を予想した。また、仕事や学習に与える具体的な影響については、直近の未来に向けて取り組むべきことをまとめた。生成AIとは車のようなものである。車があっても、身体を鍛えることは不可欠である。同様に、生成AIを使って高みを目指すとともに、自分の頭脳もしっかり鍛えつづけることを忘れないことが重要ではないか。

➊AI時代の学校教育/大学や文部科学省の対応方針とその背景

朝日新聞編集委員  増谷文生

★ChatGPTをはじめとする生成AIと、どのように向き合っていくか。国内外の大学をはじめとした学校の模索が続いている。遅れをとってきたAI分野の研究で挽回をめざす日本では、文部科学省も大学も強く規制することには消極的だ。「著作権侵害や誤った回答を含むといった問題点に注意しながら、上手に活用していこう」。概ねそんな方向性で一致している。

➊AI時代の学校教育/未来を生きるための能力:AIに取って代われない人間の価値

北海道大学大学院教授  川村秀憲

★AIの進化は、私たちにAIに置き換えられにくい能力や、1つの正解がない問題への意思決定能力を磨くことの重要性を示している。ロングテールのスキルや自らの価値観に基づく選択はAIの代替が困難であり、人間固有の価値を高める。教育は個人の興味に合わせ、モンテッソーリ教育やソクラテスメソッドなど自発的な学びを促進する方向へと進む必要がある。

➊AI時代の学校教育/学校教育にAIは必要なのか-初等教育と中等教育を中心に-

東京大学大学院教授  酒井邦嘉

★学校教育、特に初等教育や中等教育におけるAIの必要性について論じる。文部科学省初等中等教育局は、2023年7月4日に「暫定的なガイドライン」を示した。なかでも「活用が考えられる例」の是非は最重要である。本稿では特に言語脳科学の視点から、そうした生成AIの活用が学校教育に深刻な問題と障害を新たに引き起こし、全教科において言語力や思考力・創造力の低下につながることを明らかにする。

➊AI時代の学校教育/対話型AIを使った学習活動~実際に授業で対話型AIを活用した実践報告~

大阪府立佐野工科高等学校長  松野良彦

★本校では、生徒の多様化が進む中、対話型AIを授業で活用した結果、生徒の主体性や創造性を引き出すなどの教育的効果がありました。一方で、AIの生成文章について課題も明確になりました。英語や地理の授業では生徒の興味が高まり、専門科目では製品開発やグループワークで活用し興味深い成果がありました。生徒の多様性に柔軟に対応するための対話型AIの活用についての実践報告です。

➋不登校の子どもの支援 /なぜ不登校は増えつづけるのか

埼玉県立大学教授  東 宏行

★不登校児童生徒数の増加の背景をどのようにみたらよいのかを、次の3点で整理した。①2022年度の状況に対する文科省の見解をもとに、「教育機会確保法」以降の増加の背景を、保護者の意識変化を含めて考察した。②2013年度以降10年間増加しつづけている背景を、教員の多忙化等を含めて考察した。③不登校以外の諸問題、特に自死やいじめの認知件数が増加している傾向と連関している背景を考察した。

➊不登校の子どもの支援/不登校等児童生徒への支援の充実に向けて

広島県教育委員会事務局個別最適な学び担当不登校支援センター長  渡邉美佳

★広島県教育委員会では令和3年度に事務局内に不登校支援センターを設置し、不登校の未然防止及び不登校等児童生徒の社会的自立に向けた支援の強化・充実を図ってきた。不登校SSR推進校への支援や県教育支援センター(スクールエス)による支援などによって学校内外に多様な学びの場の選択肢を増やし、充実させていくことで社会とのつながりをもちながら児童生徒の成長につなげていく取組を行っている。

➋不登校の子どもの支援/学びの多様化学校の試みと一考察「ろりぽっぷプランとは?」

ろりぽっぷ学園スーパーバイザー(カウンセラー)  八巻寬治

★学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)として仙台市に開校した“ろりぽっぷ小学校”は、幼児教育とイエナプラン、人間キャリア科、保護者支援を特色とした私立の学校です。
★ろりぽっぷ学園の保育・教育理念は、大人が「どういう子に育てたいか」ではなく、子ども一人一人が「どう育とうとしているか」を大切にする学びの場です。

➋不登校の子どもの支援/フリースクールとどう向き合うか

NPO法人越谷らるご理事長  鎌倉賢哉

★「フリースクール」は、以前よりもその存在が知られるようになった。しかし、その実情はさまざまで、実態も知られていない。今後、基盤と理念がしっかりしたフリースクールが増えていくことが大切であるが、数がただ増えればいいということではない。学校に行かなくなった子どもがきちんと休める場所であること、子どもが自分の意思で自分に合ったフリースクールを探せるようになることが大切である。

➋不登校の子どもの支援/不登校の子どもをもつ保護者と仲よくするということ

開善塾教育相談研究所所長  藤崎育子

★学校の先生は忙しい、たいへんだという評判が広がり、先生自身も負担感について積極的に発言するようになりました。不登校の子どもをもつ保護者の多くが口にするのは「先生に迷惑をかけられないから」という一言です。
★教師の長時間労働は解消すべき問題ですが、「最初から学校の先生を頼りにしない」という保護者の風潮は、何とか食い止めなければならないと強く思います。子どもの教育について、責任をもって、きちんと相談にのってくれるところ、それは地域の中で持続的に運営されている学校であることが望ましいと考えるからです。

➋不登校の子どもの支援/不登校経験者から見た不登校支援の要点

帝京平成大学講師  村山大樹

★現在も、不登校で苦しんでいる子どもや保護者、支援者は数多く存在します。筆者は、5年間の不登校を経験し、その後、支援者、研究者の立場で不登校に関わってきました。
★本稿では、各視点を織り混ぜながら、3つの観点を取り上げ、不登校支援の要点と学校教員の役割を考えてみます。

連載

巻頭言/AIの普及と著作権 弁護士
島内洋人
算数科で育てる「思考・判断・表現」する力⑼単位量当たりの大きさ-速さ- 明星小学校副校長・前筑波大学附属小学校副校長
夏坂 哲志
目標準拠評価を教育に生かす(20)社会科の評価⑵目標準拠評価に必要な通年の評価基準と詳しい評価事例集 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
読解力の育成(小学校実践編)⑻小学校「読むこと」の全体像を見渡す 昭和学院小学校長・前筑波大学附属小学校教諭
青木 伸生
教育の窓(67)子どもの非認知能力をどう捉えるか 応用教育研究所理事長・筑波大学名誉教授
櫻井 茂男
漢字を教える・学ぶ⑸繰り返しの漢字書字を支える指導のあり方 奈良教育大学教授
棚橋尚子
「叱る」を考える⑽教育史のなかの「叱る」-大正期の「叱り方」論を読み解く- 常葉大学准教授
鈴木和正
子どもを真ん中に置いた支援⑷教育相談・心理相談における多職種連携-不登校支援を再考する- 和歌山県立医科大学小児成育医療支援室主事
藤田絵理子
「あきらめる」を肯定的にとらえる⑽大学生のキャリア発達とあきらめる 十文字学園女子大学准教授
永作 稔
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