- トップ
- 指導と評価
特集
全国学力・学習状況調査とは何か
★目的は13年の間に「国や教育委員会の教育施策の改善」が後退し、「学校の指導・学習の改善」がより強調されている。そのための資料がいろいろ出されている。
★実施教科・学年が少ないのが難点である。
★今後の経年変化分析に期待したい。
★記述式問題(「思考・判断・表現」の学力の測定)には課題がある。
★教科全体の結果の分析は、平均でなく指導要録に合った形が望まれる。
記述式問題と採点方法
★記述式の採点が正解と誤りの2区分で他と同じ配点なのは、主に採点の効率化のためと思われる。
★記述式では通常、部分的な正解がでるが、2区分のために正・誤いずれかに区分されてしまう。
★前記2点のことは、全体として、記述式のテスト全体に対する重要度を低下させている。
小学校国語-知識・活用一体型の問題から見えてきた授業改善への視点-
中学校国語
小学校算数の結果から 算数授業改善のポイント
中学校数学
中学校英語-調査結果を学習指導に生かす方向性と「話すこと」調査の運営上の課題-
全国学力調査と標準学力検査の違いと関連
★全国学力調査は結果を知るまでに長期間を要するが、標準学力検査は実施後短期間で結果を知ることができる。
★標準学力検査の基準は事前に設定されているので、学校・自治体単位で経年変化を知ることができる。
★標準学力検査では個人の偏差値の3-4の違いは誤差の範囲内、全国学力調査では個人の正答数の2-3の違いは誤差の範囲内であろう。
★偏差値や正答数の平均値差の解釈には効果量が有効である。
今月号のイチオシ!これだけは押さえたい学習評価(5)「思考・判断・表現」の評価基準の設定-小学校社会科の例-
●観点別学習状況「思考・判断・表現」の評価:試案作成の考え方
これまで観点別学習状況の評価基準は、おおむね満足のB基準だけではなく、十分満足のA基準が必要であり、努力を要するのC基準も設定すべきであると述べてきました。A・Cの基準が必要なのは、生徒の学習がB基準に該当するか迷った場合、A・Cの基準も見てどちらを選択すべきか考えることができるからです。
そこで今回は小学校社会科を例にして、実際の評価基準の設定例を示します。設定にあたっては本来、学習指導要領に示された各学年の指導内容にそって考えるべきです。けれども実情はその記述は、第1回(7月号)で示したように、「思考・判断・表現」に関しては3~6年でほとんど同じです。基本的に、「~を捉え、その働きを考え、表現する」で、~には学習内容が入ります。これでは(以下述べる①~⑤のように)能力の発達段階をどう踏まえて指導すればよいかわかりませんし、評価基準を設定することもできません。(理科にはこの記述がありますが、社会科にはほとんど見られません。)
そこで、思考力等の発達段階を示したオーストラリアのナショナル・カリキュラムの評価基準と評価事例集、これを一部改良したクイーンズランド州の評価基準を参考にしました。わが国の学習指導要領の内容を評価するのに適したものを選択し、またわが国にあわせて記述内容を変更しました。まず、学年ごとにB基準を設定し、このBを基本としてAとCの基準を考えました。評価基準とあわせて評価事例(各基準に典型的に合致する、実際の生徒の作品)を作成したのは、記述文だけでは判定があいまいになるのを補足するためです。
このように、今後この観点で評価基準を設定する際には、外国の先進例を参考にできますし、評価事例もできるだけ同時に考えることが望まれます。そのための労力は膨大ですから、評価基準・評価事例集とも学校ごとではなく、評価力の高い教師の英知を集め国が作るのが最善です。
●小学校社会「思考・判断・表現」の評価基準例
◆評価基準を設定する基本的な方法
3~6年の「思考・判断・表現」の発達段階(学年が上がる、BがAとなること)を次のように区分しました。この発達段階の提示が(指導にも評価にも)とても重要です。
①~を見つけること→いくつか見つけること→いくつか見つけ、その内容を述べる→内容を詳細に述べる
②~について述べる→説明を加える→調べたことや知識をもとに説明を加える
③違う点を見つける→同じ点と違う点を見つける→比較する
④少数の要因を見つける→多くの要因を見つける
⑤身近なことについて→地域について→国全体について→世界全体について
◆3年
・学習指導要領の目標と内容(略)
・B基準:①身近な場所や施設のいろいろな特徴について述べることができ、同じ点と違った点についていくつか見つけ、その内容を述べることができる。
②時間の経過により、身近な地域や人々が変わった点と変わらなかった点をいくつか見つけ、その内容を述べることができる。
③いろいろな人々が活動を通じて、つながりを持っていることをいくつか見つけることができる。
・B基準に該当する事例
①の例:【同じクラスのA君とB君の住んでいる場所を比較して、似ている点と違っている点を挙げさせ、どこが違っているか書いてみる課題】
同じ点:たくさんの人々が住んでいる、道路が街の中を通っている。公園がある。
違う点:A君のところは商店がある。古い家が多く道路はせまい。その道路に歩道はない。B君のところは商店がない。そのぶん新しい家が多い。道路は広く、歩道もついている。
②の例:【おじいさんの頃の地域の様子と現在の地域の様子を比較してみる課題】おじいさんの頃には、田んぼや畑がいっぱいあったが、今では田んぼや畑はほとんどない。川にかかっている橋はむかし木造だったが、今ではコンクリートでできている。変わらなかったのは、町の神社は変わっていないし、その祭りも変わりなく行われている。
・A基準(略)
・A基準とB基準の違いの説明:A基準とB基準の違いは、①と②では「詳しく」なること、③では「つながりの内容」まで述べることである。
・A基準に該当する事例(略)
・C基準と該当する事例(略)
◆4年
・3年との違い
①3年では、身近な地域の違う点と同じ点を考えるのだが、4年では地域から国全体に対象地域が広がり、比較する能力(違う点と同じ点よりも細かく見ていくことになる)を求めるようになる。
②3年は変わった点と同じ点を述べるだけだが、4年はどう変わたのか、またなぜ変わったのか、また変わらなかったのかを述べる。
③4年では、環境と人々の生活の関係について述べることができるようになる。
・B基準に該当する事例
①(自分の県と他の県を比較する課題)自分の県と他の県を人口や農産物、おもな産業の違いを表などにして示すことができる。
②(資料館を見学して)金原明善は、天竜川周辺の洪水防止に明治初めに尽力した。それまで氾濫を繰り返していた天竜川に堤防をつくり氾濫を防ぐことができるようになった。
③(郷土の産業を調べて)大井川流域の川根でよいお茶ができるのは、大井川から立ち上った水蒸気が霧や雲になることと関係がある。
(ほか略)
◆5年
・3年・5年との違い
①4年では対象範囲が国内での比較であったのが、5年では世界全体に広がっている。
②4年では人々と環境の関係であったのが、5年では社会的な条件が加わっている。
③については、4年での地域の変化をもたらす要因等よりも、もっと広い範囲での影響を与える要因(特に社会的な条件)を考えている。
(ほか略)(6年も略)
◆評価事例(集)の役割
例えばどの程度が「詳しく」に当たるのか、評価事例があることで具体的になる。
巻頭言/全国学力調査の結果から「学習意欲」と学力との関係を考える
連載
「教師力」アップセミナー子どもとともに成長する教師をめざして(10)校長の在り方とスクール・リーダーシップ-温かく受容的な学校組織風土の醸成と子どもたちの豊かな学びの実現のために- | 創価大学教職大学院准教授 大関 健道 |
---|---|
QUを活用したPDCAサイクルで教育実践の向上をめざして(10)二つの大きな学校教育の課題に正面から取り組む学校から学ぶ(2)-取組のむずかしさの本質・組織対応の推進- | 早稲田大学教授 河村 茂雄 |
続説明文・意見文を書くことの指導(10)ロジカル・ライティングによる意見文を書く学習(2)高校 他者の考えに対する意見文を書くことの指導-高校二年生の現代文Bでの実践- | 名古屋大学教育学部附属中・高等学校教諭 今村敦司 |
木下是雄と「言語技術の会」ルネッサンス(8)学習院に残る言語技術の会のレガシー | 学習院高等科教諭 松濤誠之 |
「主体的・対話的で深い学び」を創る(8)小学校算数3年-学習指導をより豊かで上質なものにする- | 前富山県南砺市立福光東部小学校長 中川愼一 |
教育統計・測定入門(82)欠損値を処理する多重代入法 | 法政大学教授 服部 環 |
教育相談はこう学ぶ!-全国各地の特色ある教育相談研修(10)教員の困り感に寄り添った教員研修 | 香川県教育センター教職員研修課 齊藤 浩 |
通常学級の実践から学ぶ特別支援のヒント52(10)授業参加の機会を確保する手だて | 埼玉県立大学准教授 森 正樹 |
こうすればうまくいく!スペシフィックSGE(11)ジェネリックを基盤としたスペシフィックSGE実践を拡げる | 静岡県立西部特別支援学校長 長崎良夫 |
授業をみる・語る・研究する(9)非言語的授業スキルの分析①姿勢 | 静岡県立西部特別支援学校長 長崎良夫 |
公認心理師の資格をもつガイダンスカウンセラーの実践(10)学校で働く心理職として-他職種との連携を中心に- | 共栄大学教授 和井田節子 |
講座キャリア心理学-キャリア発達を支援する-(10)多文化キャリア発達論 | 労働政策研究・研修機構副統括研究員 下村英雄 |
教育の窓(42)新しい「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」に望む | 指導と評価編集部 「指導と評価」編集部 |