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特集
巻頭言*道徳の教科化で思ったこと
道徳教育の充実―「特別の教科 道徳」(道徳科)の新設
★道徳の教科化が目指すものは、義務教育として行う道徳教育、とりわけ道徳授業としての特別の教科である道徳(道徳科)が全国どこの学校においても確実に実施されるようにすることである。道徳教育の充実には、各教科等、学校の教育活動全体で行う道徳教育を学校の実情や子どもの実態に即して推進することが何よりの肝要であり、それを道徳科の授業で補充、深化、統合することが求められる。このことで、道徳教育で育成すべき資質・能力としての道徳性が確かに養われるのである。今次の改訂において、道徳教育の要である道徳科で行う学習が明示されたことから、その特質を周到に理解して授業改善を図ることが重要である。
道徳教育とアセスメント-道徳教育を充実させるためのアセスメントの工夫-
★教育にエビデンス(確証)が求められている。道徳教育の充実が叫ばれ、「特別の教科 道徳」が全面実施されるにあたり、道徳教育の取組や成果は見えにくいといわれるが、だからこそ、計画レベルにおいて、また結果において、様々な関係要因を「見える化」することが大切である。それらをアセスメント(状況把握査定)という視点から追求しようとするのが本稿である。道徳教育は教育の中核であることを念頭に置き、ここでは大きく「道徳教育の目標追究を支える3つの根本力のアセスメント」「道徳性を構成する諸様相の3つの根本力のアセスメント」「日常生活での行動に関するアセスメント」「学級の成長と道徳的風土に関するアセスメント」「道徳の授業の取組に対するアセスメント」という5つの側面から提案する。
道徳科の「主体的・対話的で深い学び」
★道徳科において「主体的・対話的で深い学び」を率先して取り入れることで、子どもがさまざまな問題を考え議論する道徳授業に質的転換することができる。そこでは、問題解決的な学習や道徳的行為に関する体験的な学習を有効活用することで、有意義な学習指導過程にしていく。そこでは道徳科の指導と評価の一体化が求められている。
★また、こうした「考え、議論する道徳」を行うことでどのような資質・能力としての道徳性が養われるかも重視しなければならない。道徳科を学校の教育活動全体と関連づけ、総合的に取り組むことが期待される。
「特別の教科 道徳」における指導方法の工夫・留意点
★いま、道徳授業の質的改善を図ることが求められている。そのためには、道徳科としての特質は生かしながらも、いわゆる「禁じ手」を減らし、指導の形骸化から脱却して柔軟な発想に立つ授業づくりをすることが大切である。
★これからの道徳授業は、アクティブ・ラーニングの実現に向けて、問題意識を生かして主体性を高め、協働的な議論などで対話的な学びとし、能動的かつ問題解決的な深い学びを促す授業にすることが一層求められる。
★しなやかさのある道徳授業を生み出すために、発問を多様な立ち位置で生み出すこと、教材の魅力を引き出す吟味を工夫すること、指導方法の工夫を選り抜いて織り込むこと、教師の教える過程ではなく子どもの追求過程で流れを組むことなどに着眼するようにする。
「特別の教科 道徳」の評価
★「特別の教科 道徳」の評価は個人内評価で行う。個々の内容項目ごとでなく大くくりなまとまりを踏まえ、児童生徒がより多面的・多角的な見方へと発展しているか、また道徳的価値の理解を自分自身の関わりの中で深めているかを重視して評価し記述する。
★個人内評価ということは進歩・成長の様子を評価することであり、ポートフォリオ(評価)が適合すると考える。毎時間評価するのは教師の過剰負担になるので、一学期に二~三回評価する機会を設け、その記録を保管していく。そして、変化が見られたと判断したら、それを最終用に保存し、変化の見られないものは取り除く。また、観察はたいへんであるが、教師が予想しなかった変化を児童生徒が見せることもあるので、補助簿のようなものを用意して記録に残すことが望ましい。
★「多面的・多角的な見方」、「道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深める」というポイントについて、「進歩」といえる様子を考察した。
指導要録にどう記入すればよいか
★道徳教育は評価をしなかったので、世間語「評価」に侵されていない。教科化を、正しい教育評価を啓発、普及するための好機にしたい。
★指導要録では、「特別の教科 道徳」欄に、その学習状況及び道徳性に係る成長の様子の個人内評価を記述で行う。学校教育全体での道徳教育の評価は、「行動の記録」で絶対評価で行う。学校教育全体での所見を「総合所見」に記入する。
★証明の原簿でもあるので、確かな資料での事実の記録でありたい。行動・会話・発言の見取り、作文・感想文・ノート等の作品の分析、質問紙・アセスメントの諸技術・標準検査等の活用、なかでも最も確かな資料を収集する標準検査の活用は不可欠である。
道徳アセスメントシステムの紹介
★教研式道徳性アセスメントHUMAN:日常生活で起こりそうな問題場面を設定し、望ましいと考えられる選択肢から望ましくないと考えられる選択肢まで、4つを用意する。ふだんの教師の行動観察とあわせて、子ども一人一人の道徳性の発達の程度や個性の特徴をとらえる資料となる。また、学級集計からは、学級全体の発達の傾向が、内容項目ごとに読み取れる。
★教研式道徳教育アセスメントBEING:学校教育全般における道徳教育を充実させるためのアセスメント。質問項目は6つの側面から設定されている。①道徳性を支える3つの力(共感する力、振り返る力、前向きにとらえる力)②問題場面における気持ちと行動のバランス③学校生活の自己チェック④学級風土について⑤道徳の授業について⑥問題解決場面における多面的・多角的思考
連載
QUを活用した学級づくりと学力向上(10)学級づくりを基盤とした学力向上への取組-甲州市『確かな学力』育成プロジェクト-② | 山梨県教育庁義務教育課副主幹・指導主事 藤原祐喜 |
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合理的配慮が求められる時代の特別支援教育(10)医療・福祉・教育がどう連携するか | 社会福祉法人青い鳥 小児療育相談センター医師 原 仁 |
役に立つ教育カウンセリングの技法(10)特別支援教育 | 北海道情報大学准教授 五浦哲也 |
新教育課程の評価を考える(6)「評定」と情意面の評価について | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
パフォーマンス評価(3)国語「書くこと」 ①評価基準 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
「教師力」アップセミナー(10)ミドルリーダーの役割 | 京都文教大学准教授 大前暁政 |
コミュニケーション力を育てる英語教育(7)次期学習指導要領小学校「外国語」の基本理念と指導の在り方について | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
小中学校の理科(19)科学的思考力を育てるための「自由記入型実験シート」と学習意欲を高めるための「ルーブリック」の活用 | 立教英国学院 羽田 徳士 |
思考・判断・表現の評価と指導<中学校>(4)国語・数学〈記述式問題〉資料を読み取って論理的に表現する-全国学力調査から | 都留文科大学特任教授 鶴田清司 |
私のカウンセリング道程を語る(10)教育カウンセリング全国組織の立ち上げ(一九九九年~) | NPO法人日本教育カウンセラー協会会長 國分康孝 NPO法人日本教育カウンセラー協会理事 國分久子 |
教育統計・測定入門(63)共通因子に関する成長曲線モデリング | 法政大学教授 服部 環 |