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特集
指導要録の「評定」の歴史的変遷
★1955年改訂で指導要録に証明機能が負わされたことで、選抜資料としての使いやすさから「評定」欄が設けられた。これにより、五段階相対評価の一人歩きが始まった。
★1970年代になると相対評価の非教育性が指摘されるようになり、2001年版指導要録では、「評定」欄に残っていた相対評価もなくなり、目標準拠評価が全面的に採用された。
★目標準拠評価の客観性・信頼性は、教育目標と評価規準・基準を明確に設定し、それを教師間、学校間で調整・共有していくこと(モデレーション)によってこそ可能になる。そして、資格試験型の入試を展望しつつ、目標準拠評価に合った内申書の形式やその入試での位置づけも議論していく必要がある。
文部科学省の「学習指導と学習評価に対する意識調査報告書」を読む
★調査で用いられている質問紙法には、あり方を問うて教育する機能がある。本調査での「評価」は、むしろ「測定」「評定」である。「測定・評定」を「評価」と教えてしまうおそれがある。
★目標の実現状況(学力)を測定・評定して評価をしたと思い、それを資料として、教育を値踏み、点検、反省、改善する本来の評価を行っていない教師が多いようである。教育評価を正しく理解し、行う必要がある。
★最も行いやすい教科の観点別評定の「知識・理解」でも、十分自信ありは、小学校で33%ほどで、ほかはそれ以下で憂うべき状態である。個人では無理なので、教師全員で手順の精度を高めて共有することである。
観点別評価の妥当性と信頼性をどう高めるか
★形成的評価の結果は学習の文脈の中で用いられるが、総括的評価の結果は学習の文脈の外で用いられることも多いという違いを踏まえ、総括的評価として求められる妥当性と信頼性に着目する必要がある。
★観点別評価を適切に行うには、教科の目標や評価の観点の趣旨を踏まえ、単元内容にあわせた形でテストや評価課題を設定する「分析・具体化」の手順を確実に踏むことと、評価結果を標準学力検査などの外的基準と比較して評価方法を改善する取組を行うことが必要である。さらに、観点別評価の仕様を明らかにすることと、この仕様を学校間で統一することが、観点別評価に対する学校種間の合意形成がしやすくなると考えられる。
★「評価を実施する側」だけに責任を負わせるのではなく「評価の結果を利用する側」も協力して評価の妥当性と信頼性を高めていく取組が、信頼される観点別評価の実現には不可欠である。
「評定」の信頼回復への試み
★藤沢市立中学校における「評定」の信頼回復への試みは、次の形態で行われた。①藤沢市立中学校長会の理解のもと、藤沢市中学校教育研究会で各教科ごとにプロジェクトチームを発足させた。②市教育委員会から各教科指導主事の応援と助言を得た。
★取組は、次の点を中心に行われた。①複数の同教科の教師が学校を越えて集まった。②同じ「内容のまとまり」(単元・題材)について「4観点(国語科は5観点)の評価規準をどのように設定するのか」、「どのように指導し評価するのか」、「評価においてどのような子どもの姿であれば評価基準のどのレベルとするのか」を授業づくりに即して協議する。③その授業を市教育委員会の指導主事訪問時に研究授業として実施、学校を越えた同教科教師と指導主事を含めた研究協議を実施する。④成果を市全体で共有する。
「評定」の信頼回復への道
★「評定」の役割は簡潔な評価情報を提供するものとする考え方と、「評定」自身にも観点別評価とは別の意味があるとする考え方がある。
★観点別評価を合算して「評定」を出すと考えれば、「評定」の信頼性は観点別評価の各観点の信頼性の向上にまず努めるべきである。観点ごとに信頼性の確保の方法は異なるが、テスト問題の例示や、評価基準や評価事例集の統一が観点別評価の信頼性の向上に役立つ。
★事後的に評価の結果を統一するモデレーションは評価の統一の確保だけでなく、指導力の向上にもつながる。
連載
学級ソーシャルスキルを子どもに育てる(10)養護教諭から見た学級ごとのCSSの定着 | 岩手県宮古市立江繋小学校養護教諭 大久保牧子 |
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これからの評価を考える(9)学習観と評価基準 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
平成24年全国学力調査結果の考察(6)中学校国語 | 宇都宮大学准教授 飯田 和明 |
平成24年全国学力調査結果の考察(7)国際学力調査と比較して考察する-算数・数学 | 静岡大学教授 長崎 栄三 |
平成24年全国学力調査結果の考察(8)国際学力調査と比較して考察する-理科 | 宮崎大学教授 中山 迅 |
新学習指導要領で教科調査官が求める授業(8)小学校体育 | 文部科学省教科調査官 白旗和也 文部科学省視学官 杉田 洋 |
これからの小学校国語の授業づくり(22)「書くこと」3年生 | 筑波大学附属小学校教諭 青山由紀 |
坪田耕三先生の発展・応用を学ぶ小学校算数の授業づくり「深め」「拡げ」て豊かな学び-低学年でも発展・応用(5)2年 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
小学校社会科の授業のあり方(5)4年、健康なくらし・県の特色 | 東北福祉大学特任教授 有田 和正 |
小学校理科の授業づくり(10)6年A「てこの規則性」 | 文部科学省教科調査官 村山哲哉 |
アドラー心理学で教師力を高めよう(9)クラス会議を始めよう! | 滋賀県甲賀市立土山小学校教諭 森重裕二 |
教育統計・測定入門(10)相関係数の区間推定 | 法政大学教授 服部 環 |
学校の法律相談(21)警察への情報提供はどこまで | 国立教育政策研究所名誉所員 菱村 幸彦 |
だんわしつ/自分の考えを、自分の言葉で、みんなにわかるように | 浪合こころの相談室 諏訪 耕一 |
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