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特集
評価資料のまとめ方・解釈と活用
★まとめ方・解釈は、形成的評価と総括的評価に分けて論じる必要がある。
★形成的評価のまとめは単元をスパンとし、観点ごとに行うのが基本である。
★どの資料を採択し、または重視するかは、評価場面や評価項目で異なり、適切な判断が望まれる。
★単元のまとめでは「おおむね満足」の基準に達しているかどうかの判断が重要であり、補充指導は単元展開の中で計画しておくべきである。
★単元の評価をもとにして期末の総括を行うのが一般的であるが、もとの評価資料からの総括も考えられる。
★総括においては、資料の採択や質的データからの数量化など、検討すべき点が多い。また、公平性の確保という視点から、共通尺度による補正も考慮されてよい。
指導の改善 教師の立場から
★子どもの学びや育ちから教師自身の指導を改善する視点とは、学びの目標の吟味―指導・評価計画の立案―子どもの学びの見取りと改善―ふり返りと学びの足跡づくりというサイクルのなかで、子どもの学びを見取ることである。
★教師の指導を改善する段階は三つある。1.「年間計画の段階」では、子どもの学びと育ちの引き継ぎ、横断的学習の計画、ふり返りに基づく足跡カリキュラムの作成が重要である。2.「単元指導の段階」では、子どもの学びについて知ることで指導・評価計画が改善され、単元末の学びのふり返りに指導が確かめられ、学び直しによって定着が確かめられる。3.「授業場面」では、子どもへの言葉かけや対話、肯定的な評価、そしてそれらを支える系統的な教材研究が重要である。
学習の改善 児童生徒の立場から
★教師は、子どもの学びを短期に見て評価しがちであるが、子どもの発達や既習事項を念頭において一学期単位で長期的にとらえ、同時に、ペーパーテストの成績だけでなく、子どものポートフォリオを通して学びのリアルな全体像を把握するように努めたい。
★そのような点に留意しながら、1.自信過剰の子どもには弱みを克服させる、2.教師の見取りによって子どもの学びを意欲づける、3.自信喪失の子どもには強みに着目させる、4.評価規準を子どもと一緒につくる、などの手だてを講じて、子ども自身が学びを評価し、そこで得た評価情報を適切にフィードバックしてやると、質の高い子どもの学びが生まれるようになる。
学習環境の改善 管理職の立場から
★確かな学力を身につけ、将来の進路決定に向けての資質・能力の開発を図っていくというすべての児童生徒・保護者の願いは、明治五年の学制発布以来変わりはない。国際的な学力調査の結果や授業時数の削減で学力低下などが叫ばれているが、基礎的・基本的事項の学習をはじめとして、個性を生かす教育、キャリア教育を推進するなどして、学校として児童生徒の確かな学力を保証していくことは、喫緊な課題である。
★そのためには、学校としての組織力を結集して校内の指導体制を見直し、授業改善を図っていく必要がある。「子どもたちにとって『わかる授業』『できる授業』とはどういったものか」といった視点から授業研究や校内研究を実施するなどして、日々の教育実践を変えていく必要がある。
★管理職としては、確かな学力の定着に向けて学校経営方針の周知・徹底を図ること、教員が授業改善を図るための条件整備を進めること、学習活動の基本となる教育計画の改定を図ること、外部評価をはじめとした学校評価を充実させることなどに留意して、学校経営を展開していくことが大切である。
通知表「北国の子」の活用 「笑顔の学校づくり」のために
★通知表には、学校の姿勢・教育を象徴的に映し出したり、子ども・保護者・学校の相互信頼を深める助けとなったり、子どもの成長のため有効に活用していけるなど、大きな役割と可能性がある。しかし同時に、通知表は教師の行う「評価」のごく一部分であることを、常に肝に銘じておく必要がある。
★本校では、自立した、しかも能動的な子どもの学びの実現を図るため、校内で検討を重ね、次の二点を通知表作成の方向とした。1.子どもたちにとっての通知表にする。2.通知表の信憑性を高めるため、保護者・子どもへの日常の情報還流を大事にする。
★通知表の工夫は、教師間の共通理解を十分図りつつ、教育課程全体の中で一貫して行っていくことが大切である。通知表の信憑性が高まるカギは、日常の中にあることを十分に踏まえ、たゆまず改善を図っていくことが大切である。
指導要録、調査書への活用
★「高等学校入学者選抜の改善」に係る通知後、指導要録、調査書の重みは増してきたが、選抜方法の多様化、多元化の動きのなかで、最近その地位は相対的に低下しつつある。
★指導要録、調査書の利用側と作成側とのギャップが、こうした事態を生じさせている一要因である。
★客観性の保証には、教師の評価力の向上、すなわち毎時間の授業における「指導と評価の一体化」をめざした評価の蓄積が重要である。
★評価の原簿となる補助簿を活用した実践的研究が信頼性、客観性の確保につながる。
観点別評価と「評定」の問題
★指導要録の改訂に際しては、「目標の明確化」の意義、すなわち「共有性」「規準性」「明確性」「仮説性」をしっかりと押さえなくてはならない。
★観点別評価と「評定」の関係については、学力評価における分析と総合の関係ととらえるならば、分析に解消されない総合としての「評定」のあり方が追求されてよい。
★観点別評価における「観点」の設定とは、学力モデルをどう構想するのかという課題であり、現在の四観点もあくまでも仮説的な提案である。国際学力調査に影響を与えている学力モデルも研究して新しい学力モデルの提案を検討すべきである。「関心・意欲・態度」については、記述式に改めることも考えられてよい。
指導と評価の一体化 習熟度別学習・少人数指導を中心に
★個に応じた指導をするため、十五年度より少人数指導を数学・英語・理科で取り入れた。仲間づくりや生活指導を大切にして、一学級を母集団にしておもに習熟度により学習集団を編成する。
★「授業後」「単元末」「学期末」という生徒による三つの評価を継続的に実践し、指導の改善に生かしている。
★生徒による評価は、教師の指導や生徒の学習に生かすことが基本である。学期末・学年末の観点別評価や「評定」は、基本的に定期テストなど教師による評価に基づいて行う。
連載
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」-基礎・基本の考え方(7)形あそび | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
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望ましい全国学力調査のあり方を考える(3) イギリスのAPU調査を参考として-英語(2)書くこと | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
●新連載 読解力を育てる(1) 読解力を育てる意義 | 聖徳大学教授 福沢 周亮 |
授業をつくる(16)小学校家庭科 かかわりと実感のもてる学びをつくる | 筑波大学附属小学校教諭 勝田 映子 |
ペーパーテストで思考力・表現力を測る(8)中学校数学 第三学年「数量関係」 | 全校国公立幼稚園長会事務局長・前東京都公立中学校長 楚阪 博 |
新しい教育評価の動向/主要論文の解説(16)R.ロバーツ&R.ゴット 実験観察活動の評価と、関連する生徒の属性 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
どうする?小学校英語(23) 再考―小学校からの英語活動の意義 | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
だんわしつ 体験学習が学校を活性化させる | 堀 真一郎 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |