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特集
教育評価の最近の動向
★ここ十年ほどの教育評価の動向を大きくみて、筆者なりに三つに分けてみたい。第一は、量的な評価ではなく質的な評価の必要性が唱えられ「自己評価」が広く普及し、その流れを強める形で「ポートフォリオ評価」が紹介・導入されたが、他方、学力低下論争などにより、再び量的な「学力調査」もその必要性を求められてきたこと。
★第二は、絶対評価の全面的導入により、指導との一体化が進むかと思われたが、意外にかえって指導とは分離する傾向が認められること。
★第三は、新しい動向として、従来の教育評価の分野には入っていなかった学校評価、教育課程評価、教師評価なども含めて考えねばならなくなってきたこと。
知能の評価の最近の動向
★アメリカではここ20年で、従来の知能検査が大きく変わり、新しい知能検査も開発され利用されている。それらでは認知心理学の理論をもとに、能力の水準の把握よりも、子どもの認知の仕方の個性を明らかにし、個性に適応した教授法の開発に役立てることを重視している。
★日本におけるそうした知能検査の開発が、現在展開されつつある軽度発達障害を持つ子供への特別支援教育に貢献する可能性がある。
性格・行動評価の最近の動向 性格・行動評価の考え方、用い方
★「新しい学力観」が提唱され、知識偏重から、意欲・関心・態度が重視されるようになり、現学習指導要領では、「生きる力」をつける教育がうたわれている。
★このような時期には、いろいろな心理変数が役に立つと思われる。そこで、最近の教育心理学の研究から、測定道具としての多様なものを測る尺度を取り上げた。それらの多くは、教育の現場で使われてきた。
★最後に、指導要録の行動・性格の評価の作業の方法について述べた。
学力評価の最近の動向と課題
★この10年間に学力の構成要素やその重要度に関する考え方が変わり、学力を基礎づける心理的側面に注目が集まった。
★高次の技能が注目され、メタ認知能力が登場した。
★学力観の変化と共に、評価の理論も新しくなりつつある。
★評価の機能については、形成的評価が注目され始めている。また評価と学習の関係にも注目が集まっている。
学力検査の現在と今後の期待
★学力検査は目標基準準拠検査と集団基準準拠検査とに大別されるが、いずれの設計においても周到な準備が必要とされる。
★個々の児童生徒について、学力の経時的変化を知りたいことがある。年度間をまたいで共通の尺度を定義すれば、経年的に学力の伸長を追跡することができる。その作成には項目反応理論を利用できる。
入学試験の過去・現在・未来
★入学試験の過去の姿は、「相対評価」に基づく選抜試験であって、それは各学校階梯を切断・孤立させるものであった。
★「目標に準拠した評価」が「内申書」まで貫徹させることが提起された現在、「相対評価」の幻影を背景として「選抜」型入学試験のあり方と「目標に準拠した評価」に基づく「資格」型入学試験のあり方との相克が繰り広げられている。
★入学試験の未来は「接続」のなかに入学試験を位置づけ、「接続に要求される資格」としての「受験学力」の内実を明示するとこによって、子どもたちの学力保障を目指そうとするものである。
キャリア教育とその評価
★近年、若者のフリーター志向や無業者NEETの増加、新規学卒の働く意欲や職業人としての基本的な資質・能力の欠如、早期職場離脱などの問題が深刻化しており、学校教育と職業生活との接続の改善を図るキャリア教育の推進が求められている。
★キャリア教育は、青少年一人一人の「健全なキャリア発達」をめざし、「望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付けさせると共に、事故の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育」で、家庭や地域社会と連携し、保護者や関係者の理解と協力を得ながら「学校の教育活動全体を通じ、計画的、組織的」に実施することが大切である。
★キャリア教育の実施の状況やその成果などをたえず評価して、キャリア教育の実施の状況やその成果などをたえず評価して、キャリア教育の改善充実と一人一人の健全なキャリア発達の助長促進を図っていく必要がある。
特別支援教育と教育評価
★日本の特別支援教育は、いま大きな転換期を迎えている。
★緊急かつ重要な課題の一つは、軽度障害の子どもたちへの対応である。
★学校単位で全体的・総合的な支援を行うためには、スクリーニングと同定、障害の判定、個別の指導計画の作成、アウトカムの評価を、組織的に行う必要がある。
★多因子評価のための査定用具の整備と専門性の向上が今後の課題である。
指導要録の変遷
★教育評価のための唯一の法定帳簿である指導要録の変遷を、小学校児童指導要録における「各教科の学習の記録」を中心に概観する。
★指導要録には指導原簿と証明原簿という二重の性格があり、「評定」は主として後者、「観点」は主として前者のためのものである。
★「評定」は「相対評価」で出発し、途中「相対評価に絶対評価を加味する」折衷方式になり、ようやく最近絶対評価にとってかわった。両者の角逐の歴史であったと言えよう。
★「観点別学習状況」の「観点」は、初め「所見」欄に設けられて、個人内評価のためのものであった。やがてこの欄が独立して、教科ごとの分析目標としての意義を明らかにし、絶対評価のための目標として生かされた。
連載
小学校算数の基礎・基本の指導と評価(20) 授業で大切にしたいこと(3)-やってみたいという心 | 元筑波大学附属小学校教諭 正木 孝昌 |
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読書教育(4) 朗読を聴くという読書 | 聖徳大学短期大学部準教授 藪中 征代 |
豊かな心と確かな学力の育成(6) 二つの理解をもとに、幼小中一貫教育で子どもを育てる | 静岡県森町立旭が丘中学校教頭 村松 啓至 |
豊かな人間性を育てる授業シリーズ(4) 感情と感情のコントロール編(小学校版) | 教育臨床研究機構理事長 中野 良顯 牧野 昌美 |
どうする?小学校英語(12) 目標-活動-評価規準の三位一体に拠る | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
だんわしつ | (財)応用教育研究所所長 辰野 千壽 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |