月刊誌 指導と評価

2018年 5月号
  1. 2018年 5月号 Vol.64-5  No.761  定価:450円
特集
教育におけるPDCAの確立
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特集

教育におけるPDCAの確立に向けて

文教大学学園長・応用教育研究所所長  石田 恒好

★PDCA(計画・実施・点検・新しい取組)の前身は、PDS(計画・実施・評価)で、経営のサイクルである。
★「PDCAの確立」の文科省のねらいは、学校のカリキュラム、各教師の指導計画のマネジメントの強化のようである。
★国と学校は、形態が企業に近いので、そのまま適用できる。国の現状は、知育、体育は不備が目立ち、徳育は行われていない。学校、教師の範となるようしっかり行ってほしい。学校は実態や特徴、地域の要望を反映して行えばよい。
★教師は、OPDEOと立派なサイクルを確立しているが、欠いて行っている部分があるので、各段階をていねい確実に行えばよい。

PISAを利用したPDCAの確立

国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部長  猿田 祐嗣

★PISAは、各国の子供たちが将来生活していくうえで必要とされる知識や技能が義務教育終了段階においてどの程度身に付いているかを把握する目的で、主に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの三分野について、二〇〇〇年から三年おきに高校一年生を対象とした調査が実施されている。
★読解力がOECD平均並みに低迷するなどした二〇〇三年の調査結果は、いわゆる“PISAショック”をもたらし、学習指導要領において理数教育や言語活動の充実が図られる契機となるとともに、学校だけでなく国・教育委員会の取組を検証改善するPDCAサイクルの構築を促すことにつながった。
★二〇一五年からコンピュータ使用型調査に全面移行し、OECDではペーパーテストの限界を越えた調査手法を開発することによって、あらたに測定可能な能力を追求しようという動きを見せはじめている。

TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)と学習指導要領の改訂

国立教育政策研究所TIMSS研究代表  銀島 文

★本稿では、まず、TIMSSの概略を紹介し、実施母体や歴史を述べるとともに、TIMSSの特徴に関連してカリキュラムのとらえ方の三層を説明する。また、問題作成の枠組みを紹介し、算数・数学と理科の内容領域と認知領域について、それらの下位領域を概観する。さらに、学習指導要領の今回の改訂に焦点化して、答申の記述からTIMSS調査結果との関連を取り上げる。具体的には、児童生徒質問紙の結果のうち態度に関する課題が焦点化されており、対応する調査結果の一部を紹介する。学習指導要領の改訂には、未来の予測に関連する議論と現状分析が行われていると言え、TIMSSの調査結果は後者に関連する基礎情報を提供し、その他の参考指標を提供していると言える。

Q-Uの活用はPDCA活動への第一歩である

早稲田大学講師  河村昭博 

★「主体的・対話的で深い学び」による授業改善が強く求められている中で、教員がまずやるべきことは、カリキュラム・マネジメントの核となる、①学校に所属する児童生徒の実態の把握と、②教育実践の成果についての的確な評価である。①と②の確実な取組がPDCAサイクルの展開を有効にする。しかし、学校現場では①と②について、客観的なデータを用いて実証的に分析するのがむずかしく、あいまいになっていた面があった。
★標準化 (信頼性、妥当性が検証済みで保障されている) された尺度であり、かつ、有意差が確認されたポイントでカテゴライズされているQ-Uは、その数値をもって、①と②についてすみやかに検討しやすいように開発されている。Q-Uの活用は、PDCA活動への第一歩となり、カリキュラム・マネジメントを通した教育実践の向上に寄与する有効な方法である。

明確な成果と課題を引き出す学校マネジメントサイクルの要点について(AV+PDCA)

西九州大学非常勤講師・上峰町公民館長  池之上義宏

★川副中学校における「主体的に学習に取り組む態度」を育成するマネジメントサイクルの要点。
 ①A(アセスメント)機能するマネジメントサイクルの第一歩は多面的・客観的なアセスメント(標準検査等の活用)
 ②V(ビジョン)重点課題の明確化と課題解決の基本方針策定(重点課題の発見が成果につながる出発点)
 ③P(計画)重点的・基幹的な取組のPDCA策定(明確な検証方法の策定が具体的な成果と課題を導き出す要)
 ④D(指導・実践)全学年同一ベクトル・統一システムで取り組む組織体制(実践過程でも必要に応じて改善・修正する勇気)
⑤C(評価・検証)生徒の主体変容を主眼に多面的・客観的・継続的な検証・改善する(自己評価等の有効活用)
 ⑥A(改善)生徒一人一人の状況にマッチングした指導・援助の検証・改善(成果が見込めない方策は改善・変更する)

「確かな学力の定着」に向けたPDCAサイクルの確立

三重県四日市市教育委員会指導課課長補佐  前田 匠

★本市では、子どもたちの「社会人になっても通用する問題解決能力」を育成するために、学習指導と生徒指導の両面を大切にした施策や学校の取組を展開している。
★その中では、全国学力・学習状況調査やQ-U調査等の結果分析を軸としたPDCAサイクルによる検証改善を行っている。
★また、本市独自に、標準学力検査NRTや英検IBAを実施し、早期の授業改善につなげている。
★さらには、課題解消に向けた本市ならではの学力向上の取組を全市的に展開するとともに、学校独自の工夫のある取組を一体的に進めることで、着実に成果につながってきている。

連載

巻頭言 「PDCAの確立」で思ったこと 文教大学学園長・応用教育研究所所長
石田 恒好
QUを活用したPDCAサイクルの推進(2)カリキュラム・マネジメントの推進がむずかしい学校現場の本音 早稲田大学教授
河村 茂雄
教師力アップセミナー(2)イノベーターとしての教師 帝京平成大学教授
白鳥 信義
説明文・意見文を書くことの指導(2)小学校五年『まんがについての説明文・意見を書こう』 筑波大学附属小学校教諭
青木 伸生
『きめる』学びで知的にたくましい子どもを育てる-主体的・対話的で深い学びを実現する授業づくり-(2)国語における「きめる」学び 筑波大学附属小学校教諭
青木 伸生
新教育課程の評価を考える(10)社会科-地理的分野 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
パフォーマンス評価の実際(3)子どもの科学的思考力を育てるための『自由記入型実験シート』と学習意欲を高めるための『ルーブリック』~実践者の声と他教科への広がり~ 立教英国学院
羽田 徳士
特別支援教育に生かすペアレンティング(2)脳の育ちと子どもの発達 文教大学教授・子育て科学アクシス代表
成田奈緒子
構成的グループエンカウンター再入門(3)学級開き~友達関係とルール確立のきっかけづくり~ 日本教育カウンセラー協会理事
藤川 章
コミュニティにおけるガイダンスカウンセリングの展開(2)小学校教員としてのガイダンスカウンセリング さいたま市教育相談員
加藤栄治
成熟した学習者をめざして(1)学びの要因と成熟した学習者の要件 東京学芸大学名誉教授
河野義章
これからのキャリア教育(2)キャリア教育推進施策の展開 筑波大学教授
藤田 晃之
講座カウンセリング心理学(2)日本におけるカウンセリング心理学の現状と課題 東京成徳大学名誉教授
國分 康孝
パフォーマンス評価(6)算数・数学 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
教育統計・測定入門(66)項目分析と識別力 法政大学教授
服部 環
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