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月刊誌 指導と評価

2018年 12月号
  1. 2018年 12月号  Vol.64-12  No.768  定価:450円
特集
  • 発達障害と愛着障害
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  • 特集

    環境要因で発達障害様の症状は起きるのか
    浜松市社会福祉事業団子どものこころの診療所  重野 桂・浜松市社会福祉事業団子どものこころの診療所  淵野俊二

    ★発達障害と愛着障害には極めて複雑な関係がみられる。実際の子ども臨床においても、発達障害と愛着障害は非常に似た臨床像を呈す。これまでは生得的な素因の重みが強く言及されてきたが、近年環境要因の影響に注目が集まっている。そのため、子ども臨床においてはとくに、子どもが育つ家庭環境や虐待、トラウマなどの視点を考慮してアセスメントを行っていく必要がある。
    ★本稿では、まずは発達障害と愛着障害について、それぞれ虐待の視点を交えて考える。その後、虐待によって起きる脳機能の影響や脳波異常などに関する最近の研究にも簡単に触れる。最後に、ERA研究やエピジェネティクス的視点から、発達障害の環境要因について述べる。


    発達障害の実態と対応
    名古屋学芸大学教授  黒田美保

    ★発達障害はけっして稀ではなく、2012年の全国の学校を対象とした文部科学省の調査によると、通常学級に在籍し知的障害がない児童生徒のうち6.5%に上るという結果が示され、常に一定の割合の発達障害の子どもが通常級で学んでいることが推察された。こうした生徒は,以前から存在していたわけで、その生徒たちが支援のないまま社会に出ていると考えると、現在の社会には多くの発達障害の人が生活しているということになる。発達障害の支援や介入としては、発達障害児者本人への心理的介入・家族への心理的介入が中心となるが、障害の重複や生涯にわたる対応という見地からは、他機関・他職種の連携が不可欠である。

    愛着障害の実態と対応・支援
    和歌山大学教授  米澤好史

    ★発達障害と混同されやすく、正確なアセスメントがなされにくく、支援が困難になりやすい愛着障害という愛着の問題を抱えるこどもが増えてきている。愛着障害は、愛着形成を安全基地・安心基地・探索基地の三基地機能としてとらえることからよりクリアに理解できる。愛着障害と発達障害の違いを見極めながら、愛着障害の特徴、発見ポイント、その相補行動としての現れ方を指摘する。発達障害と愛着障害を併せもつタイプの存在も指摘する。愛着障害、愛着の問題を抱えるこどもへの適切ではない対応は、「一対多」の対応、「後手」の対応であり、「一対一」「先手」の対応を意識した「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラムの実際を紹介する。

    愛着や発達に課題のある子を包み込む学級経営
    早稲田大学大学院教授  盒兇△鳥

    ★子どものニーズが多様化する中、従来型の学級経営に個別対応を追加するのでは不十分である。集団の場で最初から多様性対応を包含した学級づくりを目指したい。愛着に課題のある子を視野に入れながら集団内の情緒的交流を促し、気になる子には教師が絆を太くする働きかけを開始する。発達に課題のある子への対応のいくつかを最初から学級全体に活用する。個々の子どもが主体的に学び方を選ぶ力を伸ばしたり、成長のための課題を見据えて肯定的な行動を伸ばしたりするモデルを活用する。それらによって、集団の枠組みも崩さず、個々の自尊感情を支え、個々の子どもが自分の成長のために何ができるかを考えて行動する新しい学級づくりの在り方が見えてくる。

    脳科学からみた発達障害と愛着障害の違い
    福井大学教授  友田明美

    ★「子どもの健全な発達を支えるためには何が必要か?」ということが、近年問われつづけている。超少子社会を迎えるわが国において、一人でも多くの子どもたちのからだとこころの健やかな成長を手助けし、子どもたちが健全な生活を送ることができる社会をつくることが早急に求められている。
    ★しかし、そのような中でむしろわれわれがよく目の当たりにするのは、理想とする社会とは全く正反対の現実−すなわち、児童虐待の存在する社会である。
    ★トラウマ(心の傷)は子どもたちの発達を害するように働くことがあり、従来の「発達障害」の基準に類似した症状を呈する場合がある。子どもたちの発達の特性を見守るのが周囲の大人の責任であることを再認識しなければならない。

    チームによるアセスメント
    筑波大学人間系准教授  飯田順子

    ★アセスメントは、子どもへの援助の方針や計画を立てるための資料を提供するプロセスである。本稿では、子どもを理解するために、学校心理学の枠組みに基づく学習面、心理・社会面、進路面、健康面の包括的なアセスメントを紹介する。また、発達障害や愛着障害のアセスメントで用いられる代表的な心理検査を紹介し、それによってどのようなことがわかるのかに触れる。そして、学校でのアセスメントの特徴として、教師、保護者、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、学外の専門機関のそれぞれの役割とチームで行うアセスメントの重要性について論じる。

    個別の指導計画の立て方
    広島県廿日市市教育委員会特別支援教育アドバイザー  山田 充

    ★反抗的だ、指示が入らない、他の子どもと適切に関われないなど、子どもが起こすトラブルに対応する場合、さまざまに対応を工夫することも多いが、なかなか効果を上げることができないこともよくあり、どうすればよいかと試行錯誤することが多い。こういった状態の要因として、例えば発達障害である広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)と愛着障害が考えられる。状態は似ているが、要因が違う場合、対応はまったく違ってくる。発達障害が要因の場合、愛着障害が要因の場合、個別の指導計画を作成する際の書き方や配慮や手だてについて、どのようなものがあるかについて本稿で紹介したい。

    ASD(自閉スペクトラム症)のアセスメントと支援について
    札幌市立南月寒小学校教諭  山下公司

    ★発達障害全般において言えることではあるが、適切な支援を考えていく上では、概念の理解を踏まえた上でアセスメントすることが望まれる。ASD(自閉スペクトラム症)については、「社会的コミュニケーションの障害」「常同的・限局的行動」が大きな特徴となる。
    ★それらを観点にして、現状と合わせて、幼少期の様子なども大切にアセスメントしていくことが重要となる。
    ★ASD特性の強い子どもの場合には、育てづらさからわが子を可愛く思えないケースも少なくない。虐待までいかずとも、適切な人間関係が築けずに育ってきている場合もある。
    ★子育てに対する不全感も解消していく必要があるため、適切なアセスメントから支援を展開していくことが重要である。


    連載

    巻頭言/発達障害と愛着障害−学校教育から 東京都杉並区立済美教育センター教育指導係指導教授
    月森久江
    「教師力」アップセミナー(9)特別活動を考える 帝京平成大学教授
    白鳥 信義
    QUを活用したPDCAサイクルの推進(9)現状維持志向を打破する管理職のリーダーシップ 早稲田大学教授
    河村 茂雄
    説明文・意見文を書くことの指導(9)ロジカル・ライティング:意見文を書く(2)中学校 名古屋大学教育学部附属中高等学校教諭
    杉本雅子
    『きめる』学びで知的にたくましい子どもを育てる−主体的・対話的で深い学びを実現する授業づくり−(9)体育科における「きめる」学び 筑波大学附属小学校教諭
    平川 護
    特別支援教育に生かすペアレンティング(9)ストレスの適切な対処法を共有する(1) 子育て科学アクシススタッフ
    上岡勇二
    構成的グループエンカウンター再入門(10)中学校英語科における実践 小山市立小山第三中学校教諭
    阿部明美
    コミュニティにおけるガイダンスカウンセリングの展開(9)民間教育施設におけるガイダンスカウンセリング 松実高等学園初等部校長代行
    葛貫庸子
    成熟した学習者をめざして(8)自己肯定感を育てる宝物ファイルプログラム 福井大学子どものこころの発達研究センター特別研究員
    岩堀美雪
    これからのキャリア教育(9)中学校におけるキャリア教育への期待と実践ポイント 筑波大学人間系教授
    藤田 晃之
    講座カウンセリング心理学(9)カウンセリング心理学の哲学的背景 東京成徳大学名誉教授
    國分 康孝
    教育統計・測定入門(72)項目母数の等化 法政大学教授
    服部 環
    教育の窓(37)櫻井茂男著『自律的な学習意欲の心理学:自ら学ぶことは、こんなに素晴らしい』(誠信書房、2017) 慶応大学教授
    鹿毛雅治