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学ぶことが大好きになるビジョントレーニング

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活用事例

長崎県N先生の事例

「LD通級教室」での実践
 LD通級教室で3年以上支援を続けている,小学校5年生の女児の事例です。
 児童への日常の観察からは,「音読が逐次読みとなり,内容理解も困難である」「字形が整わず,新出漢字などの記憶の難しさがある」などの状況が見て取れました。
 当初に行ったWISC-3の結果から,次のような傾向が見られました。
 ・知的発達は境界域にある
 ・動作性IQが言語性IQに比し,5%水準で有意に低い
 ・「組み合わせ」「符号」の課題で,評価点が低い

 以上のことから,「実行機能の向上を図る」「跳躍性眼球運動の向上を図る」「短期記憶の向上を図る」の3点を目標に,ビジョントレーニングを含む指導を行いました。

【指導Ⅰ期:2008年9月~2009年7月】

○指導目標
 跳躍性眼球運動を中心としたビジョントレーニング
○指導の実際
 本児には週に1度,90分の通級指導を継続した。各セッションにおいて15分程度をビジョントレーニングとして設定し跳躍性眼球運動の向上をねらった活動を行った。また,月に1度DEM数読み眼球運動テストを計測し,眼球運動の向上を見る指標とした。
 おもに行った活動としては,「眼のジャンプ」シートやLDセンターのマスコピーを活用してきた。「眼のジャンプ」シートにおいては,当初,数概念の欠如と,構音の不器用さから数唱自体の難しさが見られたため,黙読と音読を併用しながら行うようにした。また,トレーニングにあたってはメトロノームを使用し,テンポに合わせて眼球を動かすようにした。習熟するにつれテンポが数値として高くなることで,本児にとり目標的に取り上げられたため有効であった。
 全般的に,横方向の跳躍性眼球運動の際に,リズムに遅れたり,注視位置のずれが認められたりした。そのため特に左右の周辺視野を広げるために「両手でグルグル」を取り入れたりもした。
 児童の眼球運動の推移については適宜録画を行い,その変容を確認しながら取り組んでいった。

【指導Ⅱ期:2009年9月~2010年9月】

○指導目標
 眼球運動と身体運動の統合を図る
○指導の実際
 「間違い探し」における視点の軌跡をアイマークレコーダーにより記録し,考察したところ,跳躍性眼球運動に加え,視覚的な短期記憶であったり,ボディーイメージの弱さも影響していたりすることが示唆された。
 書字をマス目に整えることができない,リコーダーなどの操作が苦手,構音自体の滑らかさの欠如など不器用さも見られることから,眼球運動の向上に加え,様々なボディーイメージの向上及びその統合が必要であると考えられた。
 Ⅱ期の指導においては,跳躍性眼球運動を中心としたビジョントレーニングを中心としながらも,意図的に重心動揺を与えたり,複数課題を遂行させたりするなど,実行機能の賦活を意図した取り組みを行った。
 Ⅰ期にも行った跳躍性眼球運動をバランスボード上で行ったり,逆唱に取り組んだりすることや,矢印体操,お手玉などボールを受けたり,目標に当てたりすることなどを取り入れて指導を継続した。また,ブランコを揺らした状態で,教師の示す単語を読むなど,前庭動眼反射でアシストしながらの眼球運動を引き出すことにも取り組んできた。

【指導の成果】

 DEM(眼球運動テスト)では,次のような推移が見られた。
  2008年9月(指導当初) 縦読み70.8 横読み115 比率1.64
  2010年9月 (現在)  縦読み47.1 横読み48.2 比率1.02

 次に,学級及び通級指導において行ってきた支援によって見られた本児の成長の中から,ビジョントレーニングの寄与を大きく受けたと思われる内容について挙げる。

・行単位のとばし読みは減り,平易な文章であれば図書室で借りて読む姿が
 見られるようになった。
・単語の勝手読みについては,語彙の増加と共に減っている。
・板書転記は,当該学年児童と大きく差がなくなったため,授業中の活動時間の
 保障が出来るようになった。
・バレーボールクラブに入部した。
・「眼のジャンプ」シートを用いたトレーニングにおいて,指導当初は
 テンポ60でも達成できなかったが,現在はテンポ120で達成できる。
・委員会の放送担当として,原稿を読み上げての全校放送を行うことが出来た。
・新出漢字の学習についても意欲をひどく失うことなく現在も取り組んでいる。

【考察】

 本事例では,跳躍性眼球運動の弱さが,板書の書き写しや,音読に影響を与える1つの要因になっていたと思われる。
 現在,ビデオによる眼球運動の向上やDEM眼球運動テストの短縮はみられるが,学習支援的なフォローは今後も必要である。それに加えて,ふり仮名支援や分かち書きなどといった,環境整備を継続する必要もある。

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トレーニング対象者の年齢・性別

・小学校5年生

・女

神戸市「きこえとことばの教室」M先生の事例2

ビジョントレーニングとの相乗効果?
 小学校3年生で,2年生のときから「きこえとことばの教室」に通級していますが,知的には境界線域にあり,言葉によるコミュニケーションが上手にできない子どもです。
 初めての来室の際に,眼球運動が上下・左右・ななめ・回転・輻輳のすべてに関して動きが悪い状態でした。他の専門機関での教育相談でも眼球運動に関しての指摘があり,北出先生の紹介もされていたそうです。

 そこで,週に1回の通級指導でビジョントレーニングを行いました。練習が抜ける週もありましたが,下記のような教材から始め,「シェイプ・バイ・シェイプ(資料1参照)」「ブロック・バイ・ブロック(資料2参照)」を加えていきました。

●ビジョントレーニングPCソフトのトレーニング……15分間
●形のパズル(幼児用の木製のもの)……1巻・2巻はスムーズに進む。4巻は上に置いてする。
●絵の中からたくさんの図を見つけるプリント

 始めてから4ヶ月で,眼球運動のすべてに関して特に問題を感じなくなりました。その様子は,保護者の方にもビデオによって確認してもらいました。その後前にかかっていた医療機関でも,眼球運動が大変よくなっていると言われたそうです。
 さらにそれから5ヶ月がたちますが,眼と手の協応がまだ苦手であると思います。部分を見て全体をイメージする課題と,動くものを記憶することに関しては,とても伸びています。パソコンの操作が上手にできますので,PCソフトの教材は効果的であったと思います。

 日常生活の面では,しっかりと見ることができるようになったからでしょうか,会話がスムーズになったように思います。今までは会話がずれてしまい,コミュニケーションがうまくはかれないことが多かったのです。見るということで,状況把握が上手になってくるようにも感じています。
 また,児童は姿勢保持が苦手だったので,一本足の椅子も並行して使っていました。見ることが上手になり,姿勢も少ししっかりしてきたので,言動が落ち着いてきました。
 学習面では,板書を写すことがやや上手になったように思います。ただ,この点は,その時の気分や集中力に左右されるので,指導者との信頼関係も影響するように思いますが。

 何のケースでも,そういえるかもしれませんが,改めて考えると,視知覚のトレーニングと,その他の言語指導や運動面の練習,指導者との信頼関係づくりなどは,並行して進めていけば,さらに上達するように思います。

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トレーニング対象者の年齢・性別

小学校(きこえとことばの教室)

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東京都U先生の事例

楽しかった漢字学習
 小学生の時,学習障害ではないかと言われた生徒の事例です。
 中学校へ入学してきた段階で,その生徒は自分の名前も書くことができませんでした。保護者からは,生活に必要な漢字を読めたり書けたりできるようにしてほしいとの要望を受けました。そこで,漢字を部分に分解し,それぞれの意味を学習してから,粘土で漢字を作る学習を行いました。
 粘土は,手にべたべたと付かないように,また色も白で扱いやすいので,超軽量粘土を使いました。一晩乾かしてから,ポスカで色つけをします。生徒は楽しそうに色塗りをしていました。その後は,自分の覚えたい文字を取り上げて,いくつも作品を作りました。
 生徒は,この学習がとても楽しかったと言っていました。家庭からも,楽しく取り組んでいるようだとの話を聞きました。

 この学習をきっかけに,生徒の漢字に対する抵抗感が少なくなったように思いました。
 粘土を扱うと時間がかかるので,現在は同僚に作ってもらったジオボードを使って漢字を作ったり,これまた手製のタングラムなどを使って形を作ってから授業に入るようにしています。どの方法も手探りですが,学年の先生方と教材作りに励んだり,ビジョントレーニングをしたり,テストをしたりしながら,楽しく授業に取り組んでいます。

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東京都U先生の事例

トレーニング対象者の年齢・性別

・中学校(通級)

・女子

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コメント
粘土で文字のパーツを作り,組み合わせて漢字の練習をした例です。

石川県I先生の事例

特別支援学校(高等部)における実践
 知的障害特別支援学校に通う高等部2年男子の事例です。WISC-Ⅲの結果は「FIQ40未満」ですが,療育手帳はBの判定を受けています。
 見本と同じように簡単な形が書けない,見本と同じ方向に揃えてものが置けないといった様子が見られ,また認知面や指先の細かな動きに困難さがあり,落ち着きがなく,離席の多い生徒でした。行動の様子から,まず「ものを見る」力を育てる必要性を感じ,眼球運動を確認したところ,動く視標を見て眼で追い続けることができず,頭を固定すると眼球が全く動かない状態でした。そこで,ジオボードや視覚認知パズルによる形作りのほか,DEM,VMI,MVPT-Ⅲなどの検査を行いました。
 その結果,次のような状況でした。

・眼球が全く動かず,頭を動かすことでカバーしている。眼を寄せることも全くできない。

・DEMでは,縦読みは,繰り返し・読み飛ばし・間違い・不要な数の追加などの続出で最後までたどり着けず,横読みは1行目の段階で最後までたどり着けず,検査不能。

・VMIでは,手本の三角形を見て四角形を書いている。

 特別支援学校の高等部は教科担任制ということもあり,クラスの生徒であっても,トレーニングのためのまとまった時間がなかなか取れません。そこで,隙間時間を活用し,毎日5分を目処に,以下の方針でビジョントレーニングを行いました。

 (1)眼球運動トレーニングとして,追従・衝動・輻輳を行う
 (2)ジオボードによる模倣を,1日1パターン行う
 (3)上記2つを“できる限り毎日”行う

 時間に余裕のある時は,日常生活や学習上において,できるとよいことを「ものを見ること」と絡めて練習し,1ヶ月毎にアセスメントを行い進捗状況を把握しました。

 半年行った結果,次の成果が得られました。

・眼球運動については,頭部を動かさなくても指標を追えるようになり,眼を寄せることもできるようになった。

・DEMについては,縦読みは若干の繰り返しなどが見られたものの,最短25秒で読み切ることができるまでになった。また,横読みは一定間隔なら,かなり読めるようになった。

・VMIやペグボードでは,半年で三角形を見て三角形を構成できるようになった。また,2つの形の関係を正しく模写できる回数が増えた。

・ものを見続けることができるようになったことで,「なぞりがきができる」「鋏で線を切る」「包丁で皮が剥ける」「電卓による計算が正しくできる」「ものを同じ方向に並べることができる」「見本と同じように製品を作ることができる」など,日常生活や学習上できることが多くなった。

 これらの結果は,「ものを見る力」が不足していると思われる場合,知的障害者にも,また実年齢が比較的高い生徒にも,ビジョントレーニングが有効であることを示すものだと考えます。
 加えて,学校での取り組みをコンパクトなトレーニング方法にして保護者に紹介していくことで,このような視点をこれまで指摘されたことがなく,そのため当初は半信半疑だった保護者との連携が深まり,卒業後のトレーニングの継続も可能になりました。【2010年3月27日】

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石川県I先生の事例

トレーニング対象者の年齢・性別

・特別支援学校(高等部)

・男

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石川県H先生の事例

「文字の形を整えて書く」ことをめざして
 知的障害特別支援学校に通う小学部6年男子の事例です。
 書字の時に文字がマスにおさまらず,はみだしたり,形を整えて書けなかったりすることが多く,特に線が交差したり斜めの線が含まれたりする文字の読み書きが苦手でした。絵本の文字を読む時には,それらの文字を飛ばすことが多く,読んでいる文字を教師が示すなどの支援を行ってきました。
 行動観察や視知覚認知チェック表,フロスティッグ視知覚検査,近見・遠見数字視写検査,MVPT-3などの視知覚機能アセスメントを行うと,眼球運動や視知覚認知の困難さがあり,それが読み書きの苦手さにつながっているのではないかと思われたので,ビジョントレーニングを行うことにしました。

 トレーニングを行う部屋は,周囲からの視覚刺激が少なく静かな場所に設定し,集中しやすい環境づくりを心がけました。1回のトレーニングは20分で,週に2~3回,5ヶ月間で通算50回行いました。毎回のトレーニングは,見通しがもちやすいように決まった手順ですすめました。眼のマッサージや体操で心身をほぐしたり,教師の眼の動きや鏡を見ることで眼球の動きを十分に意識させたりして,課題に取り組みました。

 トレーニングの内容は以下のとおりです。

●眼球運動のトレーニング
 視標によるトレーニング(手作りのキャラクター視標を作成し,追従性眼球運動および跳躍性眼球運動,輻そう,開散について,両眼で頭を動かさないようにして,両眼で視標を追うようにした),ひらがな探し,数字読み,ナンバータッチなど

●視知覚認知のトレーニング
 点むすび,立体パズルなど

●眼と手の協応性のトレーニング
 はさみ,ボール遊びなど

●書字のトレーニング
 (資料ファイル参照)

 継続的な視標によるトレーニングにより,追従性眼球運動および跳躍性眼球運動や,輻そう,開散運動に向上が見られました。視標を追う眼球の動きがスムーズになり,頭を動かすことがほとんどなくなりました。改めて行った各種アセスメントでも機能向上が確認されました。
 書字では,手本をよく見て書くようになってきました。文字のバランスがよくなり,筆順や線の交差等の細かい部分にも注意が向くようになりました。また,筆圧もしっかりとし,正しい筆順で自分の名前を漢字で書けるようになりました。
 これらの結果から,特別支援学校の児童生徒を対象にした場合にも,ビジョントレーニングは,眼球運動や視知覚認知の機能向上につながり,読字および書字の問題の改善に有効であると思われます。

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石川県H先生の事例

トレーニング対象者の年齢・性別

・特別支援学校(小学部)

・男

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012_shiryo.pdf

コメント
資料ファイルは,トレーニングに使った手作りの視標と漢字カードです。
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